役割増すが人数不足、「産業医」が抱える課題

必要な職場は16万以上、なのに実働は3万人

もっとも、産業医主体で職場環境を充実させようにも、企業にとっての困難は多い。

その要因の一つと言えるのが、産業医の不足だ。厚生労働省によると、現在産業医の養成研修・講習を修了した医師は約9万人だが、実働しているのは3万人程度。日本医師会が2015年に実施した『産業医活動に対するアンケート調査』によると、有資格者が産業医活動を行わない理由として大きいのは、「本業が多忙で時間・余裕がないため」でおよそ6割を占める。医療現場においても医師を求める声は強いことがあって、産業医資格を持ちながらも、病院などで勤務している医師が多いのが実情だ。

実働している産業医は3万人、必要な職場は16万以上

実働している産業医が3万人なのに対し、産業医を必要としている職場は、全国に16万カ所以上とされる(総務省『平成26年経済センサス』)。労働安全衛生法13条では「政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない」と定めており、50人以上が働く職場には嘱託、1000人以上(有害な業務が伴う場合500人以上)が働く職場には常勤の産業医の配置を求めている。嘱託であれば複数企業の産業医業務を掛け持ちできるので、今回取材した尾林氏のように、ノウハウのある産業医が嘱託という形で複数の企業の健康経営に携わるというモデルも出始めている。

「現在6社の産業医業務を請け負っていますが、この中には、ゼロから産業保健体制の構築に携わった企業もいくつかあります。わたしが携わったことで産業医の価値を理解してくれて、『産業医がもう2~3人くらいいてくれてもいいかもしれない』と言ってくれる経営者もいる。産業保健について考える機会が少なかったという企業の方とは、自社にあった産業医がいることで、どんなことが可能になるのかを一緒に考えるところから、スタートしたいと思っています」(尾林氏)

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