集中力を育む「モンテッソーリ教育」の本質 藤井四段もこうやって集中力を身に付けた

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子どもたちが「お仕事」でつくった作品

3歳のハルト君のお気に入りの「お仕事」は、腕輪作り。2センチほどに細かくカットされたストローを、ビーズのように、ひもに一つひとつ通して作ります。

5月の初めには、なかなかうまくストローに通せなかったのですが、8月になる頃にはストローとストローの間に、小さな紙の飾りを入れられるようにまでなりました。この間、ハルト君が作ったストローの腕輪は100を軽く超えています。

普通、工作の時間というのは、今週は折り紙、次の週は粘土、その翌週はお絵かきなど、どんどんテーマが変わります。しかし、モンテッソーリ園の「お仕事」に関していえば、「その子が好きなことを、好きなだけ」することができるのです。これは大きな違いだと私は考えています。

同じものを集中して作り続けることで、ちょっとした違いに気がついたり、自ら違いを考え出したりすることができるようになります。同じように見えるハルト君のストローの腕輪ひとつをとっても、昨日は「寒色ベース」の色の組み合わせ、今日は「グラデーション」など、本人なりに非常に細かい工夫をしています。これは自分の好きなものを、延々と作り続けているからこそ生まれる工夫です。このように徹底的に好きなことをすることを通じて、子どもは集中すること、好きなことにのめり込むことを、「体験として」学んでいくのです。

敏感期に、生きるための「型」を身に付ける

『モンテッソーリ流「自分でできる子」の育て方』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

敏感期とは、武道でいえば「型」を身に付ける時期です。

「集中しなさい!」と親がいくら言っても、集中した経験を持たない子は、何においても集中することができません。つまり「集中するという型」を、この時期に体を使って身に付けた子は、集中するということがどんなことかが、教えられなくてもわかるのです。それが将棋に向かうこともあれば、運動に向かうことも、勉強に向かうこともあります。

敏感期がとりわけ大切なのは、大人がただ教えるだけでは身に付けることができない、さまざまな生き方の「型」を、身に付けることができる時期だからです。しかし、親がそのことを知らなければ、「ピンポン」ができず泣き叫ぶわが子に向かって、「ワガママ」「言うことを聞かない」などといって、しかってしまうことでしょう。

「習慣にこだわる」敏感期にある子どもには、「同じことを、同じように」させてあげることが大切。冒頭のコウタ君であれば、いつもどおりに「ピンポン」をさせてあげることが親の役割です。なぜなら、それが親が「習慣の敏感期」の子どもにできる、唯一のサポートだからです。

(構成:黒坂真由子)

百枝 義雄 吉祥寺こどもの家園長、モンテッソーリ ラ・パーチェ トレーニングコース代表

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ももえだ よしお / Yoshio Momoeda

大学卒業後、進学塾の講師・運営職を経て、不登校・高校中退生のためのフリースクールを設立する仕事に従事。人格の土台を形成する教育の必要性を感じ、モンテッソーリ教育と出会う。1998年、モンテッソーリ教育施設「吉祥寺こどもの家」を開園。2012年、新しい教員養成コース「モンテッソーリ ラ・パーチェ」を立ち上げ、代表を務める。日本全国で、保育士・幼稚園教諭・両親などさまざまな大人を対象として保育、育児についての研修会や講演会を行う。著書に『父親が子どもの未来を輝かせる』(ソフトバンククリエイティブ)、『「1人でできた!」を助ける おうちでモンテッソーリ子育て―お母さんはラクになり、子どもの未来が輝く』(PHP研究所)、共著に『「自分でできる子」が育つモンテッソーリの紙あそび』(PHP研究所)などがある。

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