チェ・ゲバラだったら、今をどう生き抜くか 息子が語る没後50年経っても褪せない魅力

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キューバ自体も経済的な問題を抱えているが、それでもキューバはアフリカ諸国に医師を送っていて、アフリカの人たちにたいへん喜んでもらっている。アフリカの人たちだって、われわれと同じような状況の中で同じような問題を抱えている。われわれは利己主義になることなく生きている。

――世界を見渡すと、利己主義的な感覚を持つ人や国が増えているように感じます。今多くの国は貧しい国を援助するよりは、自国の利益を守ることに力を入れています。こんな状況にお父さんはガッカリするかもしれませんね。

チェは何かの状況にガッカリするようなタイプではない。彼だったらそういう状況を変えるために闘うだろう。

何かを正そうとするピュアな姿に共感する

日系ボリビア人、フレディ前村氏の生涯を描いた『エルネスト』(監督:阪本順治) (c)2017 "ERNESTO" FILM PARTNERS

――10月には、日系ボリビア人で、チェと共に戦ったフレディ前村氏の生涯を描いた映画が公開されます。日本とキューバの共同製作ですが、こうした映画が今作られることをどう感じますか。

こういう映画ができたことは非常に喜ばしい。今回の主人公は、短くて激しい生涯を過ごしたが、その中でこの世の中のネガティブなものと向き合った。そして、彼は自分の意思を貫くために戦ったわけだ。彼は世の中を変えるために死をいとわなかった勇気ある人だ。彼の話は、世の中を変えるためには、革命を起こす勇気を持つことが必要だということを表している。

――映画の中でチェは、彼に大きな影響を与え、前村氏がゲリラ戦に参加するきっかけとなった人物として出てきます。ほんの短いかかわりであっても、なぜ多くの人を魅了したのでしょうか。

チェ自身はどんなときでも自分自身がまず行動し、お手本になった人。それが人々から尊敬を集めた理由だ。多くの人々が彼に魅了されるのは、彼が持っているイデオロギー、考え方、感受性の豊かさ、そして、貧困や搾取、不正などの問題に正面からぶつかって何とか正そうとするそのピュアな考え方に共感するからではないだろうか。

もちろんチェは催眠術師ではないので、むりやりに言うことを聞かせることはできない。もともと同じ興味を持っていた人が、彼と出会い、彼の考え方に共感した結果、一緒に行動したのだと思う。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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