チェ・ゲバラだったら、今をどう生き抜くか 息子が語る没後50年経っても褪せない魅力

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――今回の写真展では240点以上が展示されている。お父さんが撮った写真を見てどう感じましたか。

Camilo Guevara March(カミーロ・ゲバラ・マルチ)/1962年生まれ。チェ・ゲバラの2人目の妻の長男。モスクワ法学部卒。弁護士資格を持つ。キューバで水産省で漁業関連の仕事に携わった後、母が所長を務める「チェ・ゲバラ研究所」のコーディネーターを担当。オルタナティブ・プロジェクト部門の責任者として、子どもたちへの普及活動を行うと同時に、チェの写真展開催等の責任者を務めている(撮影:尾形 文繁)

純粋に好きだと感じた。技巧的な何かに引かれたというよりは、彼の純粋さがそのまま伝わってくるような写真だということが興味深い。多くの人は被写体に対して純粋でありたいと考えると思うが、なかなかできない。しかし、チェはそれが自然にできるような人だった。

そして、それぞれの写真にはストーリーがあるし、それを撮っている彼のストーリーも移り変わっていることがわかる。いわゆる「自撮り」のような面白いものもあるし、彼がキューバの工業大臣だったときや、メキシコでフォトジャーナリストをしていた時代の写真もある。工業大臣時代には、アジアを歴訪し、日本にも来ている。

――キューバ人にとってチェ・ゲバラとはどんな存在なのでしょう。

多くの人は彼のファンだし、私も熱心なファンの1人だ。これは息子としてではなく、キューバ人として言っている。チェ・ゲバラという人物が成し遂げたこと、掲げた理想、そしてその行動における純粋さ。すべてがすばらしいと思うし、すべてが尊敬に値する。

私個人としては、父親というよりむしろ、精神的につながっている祖先のような感覚を持っている。自分の人生が大変なときに助けてくれる、自分の人生に必要な人物、それがチェだ。

チェは今でもキューバで「生きている」

キューバ人は今でもチェを尊敬し、彼のことを愛している。彼は亡くなってしまったけれど、彼はキューバで今でも「生きている」んだ。たとえば、キューバや世界で何か間違ったこと、何か大きなことが起きたとする。そんなときに人々は、「もしチェがいればこんなことは起きなかったのに」と考える。これはキューバ人の口癖だ。キューバ人の意識の中にいつでもチェはいる。

――経済改革を推し進めたり、米国との国交を再開したりと、近年キューバには変革の波が訪れています。

これは近年に限った問題ではない。キューバで起きた最大の変化はキューバ革命だ。これによってキューバ人は独立した主権国家を手にした。これは国家プロジェクトだった。

そしてこれまでキューバは、この国家プロジェクトの中でその時々に応じて違うシナリオがあった。私たちキューバ人はそれぞれのシナリオに合った役割を果たしてきた。ただ、シナリオが変わり、戦略が変わったとしてもわれわれが乗っているボートが進む方向は同じ。進化することによって、未来にはよりよい生活が待っている。

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