地雷原を肥沃な畑に--死も覚悟する男の夢

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 努力のかいあって、地雷除去機の出荷台数は確実に伸びている。初期の油圧ショベルタイプに加え、灌木のない平地での処理作業に適したタイプなど8機種まで増えた。現在、全世界で58台が稼働している。コマツや川崎重工業など日本の大手メーカーも開発をしているが、実際の現場にこれだけの数を出荷しているのは、雨宮の地雷除去機だけだ。

その理由の一つに安全性、操作性といった性能の高さが挙げられる。が、もう一つの理由は、地雷探知機など、付属できるオプションの多さだ。中でも、特に工夫が凝らされているのが、平地タイプの除去機の後方に設置された“鋤(すき)”である。前方で地雷を除去した後、後方の鋤が土を掘り起こす仕組みだ。つまり、地雷除去機が通過した場所が、そのまま畑になるのである。

その成果の代表例が、冒頭のニカラグアのオレンジ畑だ。そのほかにもカンボジアでは、地雷除去後の土地に学校が建ち、パッションフルーツ畑やひまわり畑、農業研修所などもできた。貧困から脱出するためのインフラが整備されているのだ。

また、山梨日立建機では、地雷除去機の納入時に、現地の人々に対し、運転指導教育やメンテナンス指導を行う。自らの手で機械管理が行えるようになれば、地雷除去機の普及と同時に、現地の雇用創出につながると見ているからだ。

ただし、ビジネスとしてはこれからだ。地雷除去機の値段は3000万~8000万円と油圧ショベルの倍の値段だが、8機種の開発に投じた10億円の投資回収にはいまだ至っていない。雨宮は地雷除去機をボランティアで製造しているわけでは決してない。「開発するまでは採算度外視でやってきたが、これからは利益を上げていく必要がある。それを再投資に回して事業を継続していくことによって、初めて企業の社会的責任が成り立つ」(雨宮)と考えているのだ。

地雷除去機の潜在需要は非常に大きい。地雷は全世界に1億個以上埋まっているといわれる。たとえば、アフリカ中央部に位置するアンゴラの地雷原は約42万平方キロメートルもあり、日本の国土より広い。しかも、「地雷原がある地域に限って、農業向きのいい土地が多い」(雨宮)。

「地雷で苦しんでいる人たちが、自立した生活を送れる世界を作りたい」というのが雨宮の願いだ。早期の実現へ向け、雨宮は今日も国内外を飛び回り、地雷除去機の普及活動を続けている。 (敬称略)

あめみや・きよし
1947年山梨県生まれ。中学卒業後、東京の建設機械メーカーに就職。70年に山梨に戻り、建設設備機械会社を設立。97年に日立グループ入り。

(中島順一郎 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

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