脱・化学洗剤!新世代の“ケンカの売り方” 大手が陣取る日用品市場で奮闘する、若き起業家

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ローリーとブライアンは、高校時代の同級生だ。ミシガン州の出身で、高校時代は一緒にスポーツに励んだりしたが、それぞれ親元を離れて大学へ進学してからは交流が途絶えていた。ところが、2人は1998年のあるとき、デトロイトからサンフランシスコ行きの飛行機に乗り合わせた。

ローリーは、スタンフォード大学で化学エンジニアリングと環境科学を学んだ後、地球温暖化のためのレポートを書く仕事をしていた。一方、ブライアンは、ロード・アイランド大学とロンドンのリッチモンド大学を卒業した後に広告業界の仕事に就き、大企業のためのブランディングやマーケティングの仕事をしていた。そして、機上でばったり再会したとき、偶然にも2人はそれぞれに何か違った仕事をしたいと考えていたのである。

飛行機が目的地に到着するまでの数時間、そんなことを話し合う。そして、また、偶然、同じサンフランシスコに住んでいることを知った2人は、その後もどんなことが一緒にできるのかを、ことあるごとに話し合ったのである。

ほぼ存在しなかった、非・化学洗剤

いろいろな考えを巡らすうちに到達したのが、自然素材を用いた洗剤だった。世の中では、オーガニック食品へ向かう消費者が増えつつあった。安全な食や地球環境への配慮もあり、消費者は自分の消費活動をコンシャスに行うようになり始めていたのだ。ところがその一方で、住まいのスタイルやデザインに対する関心も高まっているにもかかわらず、皿洗いの洗剤や掃除用洗剤は、スーパーの棚を見ても従来の製品しかない。

目的別、あるいは機能性を高めた製品などバラエティは増えているものの、コンセプトは従来と同じ。住まいをきれいにするには、強力な化学原料を用いるしかないというものばかりだったのだ。

自然素材を用いて、安全で洗浄力も強い洗剤は作れないものか。また、オーガニック系製品によくある地味な感じではなく、しゃれたスタイルや楽しさのあるものがあってもいいのではないか。2人はある日、そのアプローチこそ追究すべき道だと結論づけたのだ。

そのうち、ローリーが友人たちと住むシェアハウスに空室ができて、ブライアンがそこに移り住む。ローリーの原料に関する専門知識を用いて、台所でいろいろな実験が繰り返される。急にトイレ掃除や皿洗いに熱心になるふたりを、同じアパートをシェアする友人たちは不思議がった。寝る時間も惜しんで製品作りをし、パッケージを考え、親戚や友達から資金を集め、知人に協力を要請した。

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