脱・化学洗剤!新世代の“ケンカの売り方” 大手が陣取る日用品市場で奮闘する、若き起業家

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こうして最初の4製品ができた。そうして、洗剤業界にも小売業界にも何のコネもない2人は、地元の独立系スーパーに掛け合って、製品を売ってもらった。

見た目もスタイリッシュな、メソッド社の洗剤(同社HPより)

よく売れたのは、きゅうりの香りのするバスルーム用の掃除洗剤やミントの香りの皿洗い用洗剤。数時間のうちに製品はどんどん棚からなくなっていた。製品を買った消費者からは、「こういうものが欲しかった」という電話やメールが入る。そうして、しばらく後に大手デパートのチェーンで製品が売られるようになって、メソッドは全国的なブランドになったのである。

現在、メソッドには60を超える製品がある。ピンクグレープフルーツの香りのシリーズもあれば、海辺のセージの香りがするハンドソープもある。香りもすべて自然のものだ。バスルーム洗剤も数種類そろい、ボディ用石けんもできた。シーズンごとに売り出される限定商品もある。最近のヒットは、通常の4分の1、たった12ミリリットルで1回分の洗濯ができる洗濯機用洗剤だ。

「奇妙なことは、神々しさの次に大切」

門外漢として業界の常識を覆し、数々のイノベーティブ企業賞を受けたメソッドには、自分たちの製品作りや会社の文化について、合言葉のようないくつかの決まりがある。

たとえば、「奇妙であることは、神々しさの次に大切」。これまでの方法、よくあるやり方をそのままやるのではなくて、ヘンなこと考えついてみようということだ。

「失敗は、そこから学ぶことができる、ちょっとした混乱のこと」や「頭を使って、巨大企業の足の間をすり抜けよう」というのもある。要は、慣習を破り、迅速に行動し、人間にとってよりいいものを実現しようというわけだ。

メソッドは、今年ベルギーの大手自然洗剤会社であるエコーバーに買収された。巨大企業の洗剤メーカーが大量生産態勢を敷いて安価に効率的に製品作りをする中、世界にインパクトを与えるためには、志を同じくする企業と組むのが最良と考えた結果という。メソッドのブランドはこれからも続き、今後はアジアにも進出する予定だ。

古い既存の業界に挑んだ2人。時代の波をつかむには、果敢な思考と行動こそが必要だという教訓だ。


 

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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