あなたが知らない児童労働の過酷すぎる現場 劣悪な環境に置かれる1億6800万人の子供
岩附:「ビジネスと人権の指導原則」から、「英国現代奴隷法」という法律ができていて。英国現代奴隷法の中の一つに、「企業がサプライチェーン(供給連鎖)の中に人権問題があるかどうかのdue diligence(精査)を行なって、その情報公開をしなければならない」という情報公開が義務付けられている法律があるんです。それを監視するのは誰かというと、「それはNGOセクターがやってくれたらいい」と。政府は情報公開だけを義務付けしますという法律なんですけど、すごくいいなと思っていて。due diligence(精査)をしたかどうかを報告するので、「やってません」という報告をしようと思えばできるんです。でもそしたらNGOから必ず何か言われるので、そういう緊張感をうまく使ったバランスのとれた法律だなと思っていて。そういう仕組みが、実はイギリスだけじゃなくて、今アメリカでもフランスでもオランダでもどんどんできているんですよ。いわゆる先進国の中で。日本はまだそういうのが全くなくて。そういう意味では一つの省庁だけで取り扱える課題じゃないというのも課題で、前に進めづらいのかなと思います。
堀:それはある種、人権をどうするかという話もさることながら、産業としても持続可能な開発、発展を維持するためにもこういう改革が必要なんだという風に目が向いているからですよね。
岩附:そうだと思います。Sustainability(持続可能性)をそういう風に考えていると思いますし、逆にそういうルールをどんどん作っていっているのが欧州だと思いますね。
堀:それに(日本は)無警戒というか。
岩附:そうなんです。困るのは日本の中小企業さんで。なぜかというと、欧州の取引先から日本の大企業に来て、日本の大企業からサプライチェーン(供給連鎖)である日本の中小企業のところに来て、「あなたのところ児童労働ないですよね」と急に言われるという現象が今起きていて。
堀:もう起きている?
岩附:そうなんです。そういう意味では日本もサプライヤー(部品製造業者)でもあるんですよね。買うだけじゃなくて、サプライヤー(部品製造業者)でもあるので、人権を守るということが実はすごくビジネスの中で重要になっていること自体に無自覚、あまりにもというのがありますね。それで今どうしていいかわからなくて困っているというのが現状だと思いますね。
堀:実際、きちんと調査した結果、証拠としてうちは関わっていませんということを出せないと取引というのはできなくなるんですか?