太陽電池に足場を築け! 投資を拡大する総合商社

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 欧州を中心に太陽電池の需要が急拡大する中で、太陽電池の製造には世界中から200社以上のメーカーが参入。さながら太陽電池バブルのような様相だ。その中にあって、熱くなっているのはメーカーだけではない。日本の総合商社が世界中で着々とビジネスの基盤を固めつつある。

この夏、スペインで“一番乗り”をめぐるバトルが静かに繰り広げられた。5月、住友商事はスペイン領カナリア諸島で年間9メガワットのソーラーパークを建設すると発表。大手商社としては、太陽光発電ビジネス参入第1号になるはずだった。しかし、7月31日に三井物産が英国の電力事業者と組み、カタルーニャ地方で稼働中の太陽光発電事業会社の買収を発表したことで、第1号は三井物産に変わった。

一番乗りを奪われた住友商事の福原豊樹・新エネルギー事業チーム長は「一番か二番かよりも、現行のタリフ(買い取り価格)の適用を受けられるかどうかが重要だ」と言う。スペインは9月末に買い取り価格を大幅に引き下げる予定。そのため住友商事のカナリアは9月中に稼働、現行価格での適用を目指している。引き下げ後の価格適用となれば、収支見通しが大きく狂ってしまうだけに、遅れは許されない。三井物産のプロジェクトも1・36メガワットの本格設備を9月中に操業させ現行価格での適用をもくろむ。両社ともライバル企業の動向を気にしつつも、政府の買い取り価格政策に神経を尖らす。

住友商事、三井物産だけではない。伊藤忠商事はスペイン、イタリアでの太陽光発電事業を準備中で、三菱商事も出資交渉中の案件があることを認めている。各社とも固定価格買い取り制度のある欧州の太陽光発電事業で経験を積み、米国や新興国、日本への展開をにらんでいる。

バリューチェーンの各段階で収入

総合商社の太陽電池関連ビジネスは長い歴史を持っている。しかし、もともと手掛けていたのは、太陽電池メーカー向けの材料・資機材の仕入れ販売、日本メーカー製の太陽電池販売、製造装置販売など、川上、川中における仕入れ販売業務だった。

が、ここに来て強化しているのは川下部分だ。欧米市場の拡大を受け、商取引にとどまらず、最下流に当たる発電所の経営にまでウィングを広げた。川上から川下まで“バリューチェーン”を築き、各段階で収入を得ていくのが最近の総合商社の必勝パターンだが、太陽電池でもこの戦略を踏襲しているのだ。

もっとも、総合商社の全売り上げに占める太陽電池ビジネスの比率は0・01%にも満たない。社運をかけて太陽電池ビジネスに挑むシャープとはこの点で事情が異なる。

しかも、目先の急拡大を期待しているわけでもない。住友商事の福原氏は「太陽光発電事業が会社の収益柱になることはないだろう」と断言する。欧州でも大型となる住友商事のカナリア諸島の案件でさえ総事業費は85億円。約70億円をプロジェクトファイナンスで賄い、自己資金は約15億円。同じ発電事業でも中東で計画中の火力発電による造水・発電プロジェクトの総事業費は6000億円超。これと比べると、太陽光発電事業のスケールが小さいことは事実だ。

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