早稲田直系の付属校は「山」で秀才を育てる 東京ドーム約15個分の校地全体が生きた教材

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吉田学院長は本庄市の出身である。もともと国語の教員で、公立高校に4年間勤めたあと、できたばかりの本庄高等学院に転職した。吉田学院長の語り口は、テレビの歴史番組でナレーションをするアナウンサーのように明瞭かつ上品だ。聞いているだけで穏やかな気持ちになれてしまう。

「ここから自転車で約20分くらいのところに児玉飛行場跡地があります。戦争中はそこからはゼロ戦も飛んでいたといわれています。ボロボロになったゼロ戦に、松根油を入れて飛ばしたっていうんですよ」

戦時中の特攻隊の話、終戦の日を描いた映画の話などを取り上げ、自分たちが直接触れたものから歴史の糸をたぐり寄せる。

「……そんなことを、このポスターを見て、連想しました。これはひとごとではないのかもしれない。皆さんは日本の動向をよく見ていてくださいね。今朝、国会議員たちは徹夜をして、例のあの法案が通過しましたよね……」

史料や文学を題材にしながら、本庄市周辺の歴史や文化を学び、時に重い社会問題にまで踏み込む。よく歴史の教科書に描かれている時代の空気が、実際に本庄市にも流れていたことを、生々しく感じ取ることができる。

吉田学院長の地元愛にあふれた授業であった。

自分の生活の場を知ることはアイデンティティをつくることにほかならない(写真:筆者撮影)

教室を出ればすぐそこで野鳥観察ができる

森の中では数十人の生徒たちが樹上を見上げていた。こちらは「大久保山で科学する」の授業中である。担当するのは新井宏嘉教諭。

この日のテーマは「野鳥の観察」。2種類の野鳥を観察し、姿、行動、鳴き声などの特徴を正確に記録する。スマホを使って写真を撮ったり、鳴き声を録音したりすることも推奨している。

森の中とはいっても、生徒たちにとっては普通に毎日通る通学路である。舗装などされていない。本当に森の中の道である。新井教諭が言う。

「ヒヨドリ、シジュウカラ、ウグイス、ヒバリなどが生息しています。自分自身の目で見て、観察する。自然科学の基本の実践です。校舎を出てすぐに、野鳥観察ができる環境があることは非常に恵まれています」

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