博報堂の打ち合わせは「50%が雑談」なワケ 新しい発想が次々と生まれる秘密

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この会話例では、「全然関係ないんだけど……」の後に続く会話が短く納まっていますが、実際の打ち合わせでは10分以上続くことも頻繁にあります。また、「まったく関係がない話」を続けた結果、何も新しい発想につながらなかった、という場合もよくあります。むしろ、アイデアにつながらない場合のほうが割合としては圧倒的に多いといえるでしょう。そのため、博報堂の打ち合わせに初めて参加すると、「単なる雑談」ばかりを繰り返しているように見える会話に戸惑ってしまうのです。

このような「全然関係ない話」ばかりの打ち合わせを続けていくと、しだいに、「これ、本当に結論が出るのかな?」と、場に混沌とした雰囲気が漂います。

しかし、そのような〝空気〞を察して、拡散をやめてしまってはいけません。拡散のプロセスで最も大切なことは、「混沌を恐れない」ことです。新しいアイデアは、混沌を突き抜けた先にあります。

「最短距離で答えを出したい」という気持ちをグッと抑えて、あえて「脱線」をして横道に逸れたりしながら、じっくりと思考を広げていく。これが、博報堂式打ち合わせ術の正体なのです。

安易にまとめない

雑談のほかに、一般的な打ち合わせと博報堂の打ち合わせの大きな違いがあります。それが、打ち合わせの「終わり方」です。

私たちの打ち合わせでは、「何が決まって、何が決まらなかったのか」をあえてあいまいにしたまま終わらせることがよくあります。さまざまな視点から話題を広げていくと、「このあたりに可能性がありそうだ」とか、「なんだかわからないけど、違和感がある」と感じる場合があります。そんなとき、私たちは、その場で無理やり答えを導き出そうとはせず、一度、“寝かす”のです。

「打ち合わせをしたら、そのたびに何か結論を出さなければいけない」

「結論の出ない打ち合わせは無駄」と考えがちですが、私たちは結論を無理に出そうとしません。

「じゃ、そういうことで」と言って、「そういうこと」がどういうことなのかわからないまま、いったん打ち合わせを終わらせ、次回に持ち越すことがよくあります。

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次の打ち合わせまで内容を寝かせておくと、無意識のうちに、テーマに関連するインプットが頭の中で整理され、新たなアイデアがひらめいたり、ブレイクスルーのきっかけが見つかったりすることがあります。

あまりにもテーマや1つのアイデアに集中しすぎてしまうと、かえって視野が狭くなり、質がむしろ劣っていく可能性もあります。1度アイデアを放り出したり、忘れたり、寝かせたり、ほったらかしにすることによって、アイデアを客観的に見ることができるという効果があるのです。ぜひ、何らか参考にしてみていただけたらと思います。

岡田 庄生 博報堂ブランド・イノベーションデザイン局 ディレクター

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おかだ しょうお / Shoo Okada

1981年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、2004年、株式会社博報堂入社。PR 戦略局を経て、現在、企業ビジョンやブランド、商品開発の支援を行う博報堂ブランドデザインに所属。2013年、日本広告業協会(JAAA)懸賞論文金賞受賞。2014年、日本PR協会「PRアワード2014」優秀賞受賞。著書に『買わせる発想 相手の心を動かす3つの習慣』(講談社)『お客様を買う気にさせる「価値」の見つけ方』(KADOKAWA)などがある。WEBコラム「ブランドたまご」編集長。東京工業大学非常勤講師。日本大学非常勤講師。

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