渋谷駅前が「荒れた所」から観光地化した事情 仕掛け人は元博報堂の40代異色区長だった!

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ただし、この渋谷駅前のハロウィーンイベントに関しても先にご紹介したスポーツイベント時の乱痴気騒ぎと同じく、当初の報道は一部サブカル系のメディアを除き、このムーブメントを好意的にとらえるものは少なかった。仮装した一部の若者たちが通行人や車などに対する迷惑行為、けんかや痴漢行為を行うこと、そして特に参加者たちが仮装のために付近の商業施設のトイレを占有し、ゴミを放置することなど、さまざまな現象がマイナスの論調で報じられることが多かったのである。

その渋谷のハロウィーンイベントが急にメディアによって好意的に報じられるようになったのが、2016年のハロウィーンに合わせて警視庁から発表された、渋谷駅前スクランブル交差点の「歩行者天国化」措置からである。2016年、警視庁は毎年10月31日のハロウィーンになると仮装した若者が路上にあふれ、車の通行を妨げるなどして問題になっている駅前スクランブル交差点およびその周辺地域への車両進入を規制し、全面的に歩行者天国化することを発表した。周辺地域の混雑問題を緩和し、交通の危険性を低減するための措置であったが、この警視庁による発表は「逆転の発想による安全対策」としてマスメディアによって好意的に報じられた。2016年のハロウィーンシーズンには、歩行者天国で思い思いの仮装を楽しむ若者たちとともに、イベント終了後にゴミを集めて回るボランティアの姿などがメディアによって報じられ、世間がこれを好意的に受け止めるようになったのである。

元博報堂の渋谷区長「騒ぎになるから禁止、ではない」

この渋谷駅前スクランブル交差点の歩行者天国化の背景には、実はナイトタイムエコノミーを地域の経済活性化に活用しようとする渋谷区の政策が存在していた。2015年に渋谷区長へと就任した長谷部健氏は東京都渋谷区神宮前生まれで、広告代理店大手の博報堂から政治の世界に転向した「変わり種」の政治家である。同氏は2003年から3期12年にわたって渋谷区議会議員を務め、2015年に行われた渋谷区長選挙へ出馬、43歳という異例の若さで区長に就任した。

自身を政治家ではなく「ソーシャルプロデューサー」と位置づける長谷部区長は、その就任以後「文化発信地」としての渋谷の再生に尽力し、そのメニューの一つとして渋谷区のナイトタイムエコノミーの振興を明確に政策の中心に据えてきた。先述のワールドカップやハロウィーンにおける渋谷駅前スクランブル交差点の乱痴気騒ぎに関して、長谷部区長は2016年1月に行われたメディア取材において以下のように語っている。

ハロウィンやワールドカップのときなど黙っていても人が集まってきます。騒ぎになるから禁止するのではなく、そういう盛り上がりを生かすのが渋谷らしさだと思う。秩序を作りながら、他の街とも連携して地域活性につなげていくことができれば素晴らしい。
(出所:TOKYO HEADLINE Vol.658)
次ページ区長の発想の原点とは?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事