渋谷駅前が「荒れた所」から観光地化した事情

仕掛け人は元博報堂の40代異色区長だった!

この一連の報道の後、サッカーのみならず何らかの大きな国際スポーツ大会があるたびに、渋谷のスクランブル交差点にはファンたちが集結して騒ぎを起こすという一種の「名所」となった。さらにそこで起こるトラブルを期待して、マスコミ各社があらかじめカメラを構えて集結するようになる。そして、そのマスコミのカメラの存在がさらに一部の行動をエスカレートさせるという悪循環が起こり始めたのである。こうしてスクランブル交差点は、社会から「大きなイベントがあるたびに乱痴気騒ぎが起こる」という“好ましくない”イメージをもって見られるようになった。

ユーモラスなDJポリスの活躍で「秩序」が生まれた

が、こうしたイメージが逆転する現象が起こり始めた。そのきっかけとなったのが、これら群集を治めるために警視庁が投入した「DJポリス」の登場であった。「DJポリス」とは、2013年6月にサッカー日本代表がアジア予選においてワールドカップ出場を決めた夜、渋谷駅駅前のスクランブル交差点に投入された警視庁機動隊員に対する愛称である。DJポリスの正式な所属名は「警視庁警備部第9機動隊広報係」と呼ばれる組織であり、お祭りや花火大会など大規模イベントにおいて群集の誘導指示などを受け持つ専門の警察組織である。このDJポリスは、2013年のワールドカップアジア予選後の渋谷駅前においても興奮状態のサッカーファンたちを鎮めるために出動を行い、周辺整理にあたった。その際に、

「皆さんは12番目の選手。日本代表のようなチームワークでゆっくり進んでください。けがをしては、W杯出場も後味の悪いものになってしまいます」

「怖い顔をしたお巡りさん、皆さんが憎くてやっているわけではありません。心ではW杯出場を喜んでいるんです」

などとユーモアを交えた誘導指示を披露し人気を博した。

このDJポリスのユーモラスな誘導指示は、その後の渋谷駅前のスクランブル交差点での乱痴気騒ぎのありさまに対して大きな影響を与えた。DJポリスのメディア露出が増え、一種の「タレント」と化したことでスクランブル交差点に集結する群集たちがその誘導指示に素直に応じるようになり、そこに一定の秩序が生まれた。またメディア上では、冗談を交えながら誘導指示をするDJポリスと、それに向かって手を振り、時には黄色い声援を挙げながらカメラを向けるスポーツファンたちのコミカルな姿がつねにセットとしてメディアに取り上げられるようになった。このような情景がテレビなどを通じて全国のお茶の間に放送されることによって、社会的に好ましくないとされていた渋谷駅前スクランブル交差点の乱痴気騒ぎを世間が徐々に好意的に受け止め始めたのである。

このような社会的認知の変化は、その後の渋谷駅前スクランブル交差点の統制のあり方に大きな変化を与えている。それが、2016年のハロウィーンシーズンに行われた渋谷駅前のスクランブル交差点を歩行者天国化する措置である。渋谷におけるハロウィーンイベントに関しては、少なくとも2013年あたりから渋谷駅前のスクランブル交差点、バスケ通り(旧センター街)一円のエリアで仮装を行った若者たちが集結する現象が確認されてきたが、この自然発生的な現象は徐々にメディアに注目され、年を経るごとにそれが大きなムーブメントになってきた。

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