仕事を「安定」で選んではいけない根本理由 「興味」がなければ何事も成し遂げられない

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勉強を取ってみても、実際に私自身、漠然と高校で勉強していたときよりも、むしろ社会に出てからのほうが身が入っていることを実感してきました。なぜならば、自分が選んだ分野を対象に勉強し始めたがゆえに、勉強に自主性が生まれただけでなく、自分の中で自分の基準で設定した明確なゴールが見えたこともあり、学んでいて楽しいと思うようになれたからです。そしてその興味のある対象を仕事にしてきたわけです。

反対に、給与などの面で仕事を考えてしまうと、たとえばちょっとつらいことがあったりしたらすぐにあきらめることにもつながりかねません。もっと言うと、仕事や勉強がつまらないものである、という対象になってしまいかねません。

これでは自主性も継続性もあったものではないでしょう。

給与が安定しているからいいや、と短期的には考えることも可能でしょうが、決してそのような状態は長くは続きません。ましてや安定した給与を未来永劫保証できる会社や仕事はもはや存在しません。

では将来、その興味のある対象が変わったらどうするか? まじめにその道を進みたいなら、方向転換すればいいのです。人間誰しも、何かの分野をとことん突き詰めてみないと、本当に自分がやりたいことなんて見えてきません。

彩さんはまだ若いですから、方向転換はこの先十分可能です。むしろ足りないのは経験です。単なる経験ではなく、とことん特定の分野を突き詰める経験です。現時点で薬剤師に興味があるのであれば、その分野を真剣に勉強してみましょうよ。仮にその興味の対象が将来変わったとしても、何かに真剣に打ち込んだ経験は、絶対にその後の人生の役に立つはずです。

深く経験をすることで「自分を知る」

もちろん簡単にあきらめてはいけませんが、仮に「違うかも」と思ったらその違う理由をとことん突き詰めることで、自分にとって勉強や仕事を選ぶうえでの選択基準がひとつ出来上がることになります。選択基準とはつまり自分の中での判断の軸ですね。自分自身が主役の人生を送ろうと思ったら、この軸を人生のあらゆる分野で持っていることが重要です。

そうすることで他人の意見や世間の基準に流されることなく、自分の考えを持ち、自分の意見で人生の判断を下せるようになるからです。つまり、深く経験をすることで「自分を知る」ことができる、ということです。

自分の軸を持つ、自分を知る。

まだ彩さんは学生ですから、その意味はあまりわからないかもしれません。

でも、この先、社会に出たときにその重要性はよくわかるはずです。なぜならば、社会や自分の人生には教室の中での問題と違って、正解も、正解を導くための「絶対」は存在しないからです。自分にとっての正解こそが、本当の正解なんですね。だからこそ、自分の軸を持って判断ができることが大切なのです。

ですから、現在、興味がある分野が明確にあるのであれば、まずはやってみましょう。頭であまり考えすぎると、結局、行動につながらなくなってしまいますよ。彩さんが、今後の社会人生活に向けて、よりご自身を知るきっかけをつかまれることを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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