「どうせなら広くフェラーリに関心のある人々もターゲットとすればいいのに」と思うかもしれないが、実はこの囲い込みのコンセプトこそがフェラーリをフェラーリたらしめている。狙いは大きく3つある。
まずは、ブランドパワーを高める唯一無二の機会であるということだ。拙著『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』でも詳しく解説しているが、私はブランドの確立には3つの要素が欠かせないと考えている。「独自性と持続性」「希少性」「伝説(ストーリー)」だ。
これら希少性を売りにするメーカーにとって、この類のアニバーサリーイベントは、自らの歴史とストーリーに脚光を当て、時にアップデートし、さらに魅力のあるものに仕立てる。そのヒストリーや伝説も定期的にメンテナンスを行い、時代に合わせた魅力的なものにすることが必要だ。
フェラーリが伝統的に重視してきた2つの要素
たとえば、このフェラーリ創立70周年ではフェラーリブランドが伝統的に重視してきた2つの要素を強調した。「ラ・フェラーリ アペルタ」でハイブリッド・スーパー・スポーツカーを開発することができる高い技術力を、“フェラーリ・テーラーメードが新たにデザインする70台”で顧客の好みに合わせたオーダーメードへの取り組みをそれぞれうたったのだ。
2つ目は、顧客のブランドに対する求心力をより強める狙いだ。これらのイベントは限られたロイヤルユーザーだけが招かれ、もちろんオーナー以外は参加できない。そこではフェラーリが彼らをファミリーの一員として迎え、もてなすことで、選ばれた者というプライドを大いにくすぐる。
最後は実際の販促活動に即しているという点だ。そもそもフェラーリのようなスーパーカーメーカーは、一定程度に限定された中での販促活動しか、やりたくてもできない。
通常、自動車ディーラーでは夏冬のボーナスや、3月の決算期末など、さまざまな口実でフェアを企画。新聞チラシやウェブ広告などを用い、来場者にはノベルティをプレゼントして、店舗へと新たな顧客を呼び込むことを狙う。
だが、フェラーリのような希少ブランドでは誰でも平等に呼び込むセールスキャンペーンは御法度。こういったブランドはあえて敷居を高く設定する。つまり、選ばれた人だけが招待されるという構図にしなければ、既存ユーザーがそっぽを向いてしまう。
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