親同伴も?就活への親の関与が高まっている 「親の意向」が就職先の決定に大きく影響

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これは大学の就職課にいた採用担当者からの証言だ。

「大学の就職課長をしていたとき、就職活動をしない学生の家庭訪問を実施していました。学生とその両親をまじえて面談を繰り返しました。そのとき、両親から『そんな無理をしてまで就職しなくてもいいです。就職できなかったら、生活保護を受けさせます』と、平気で言う親の多いこと!ビックリです。学生の教育より、親の教育のほうを先にしないと!と思いました」(300人以下、メーカー)と、子どもが生活保護を受けてもかまわないという親までいたという。

親宛に手紙や自社製品を送る企業も

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親の影響力の拡大を受けて、親向けの対策を実施している企業が増えてきている。多いのは内々定以後の取り組みで、説明ガイドや手紙、自社製品の送付だ。「入社者の家庭に手紙と品物を送付」(1001人以上、情報・通信)、「お礼状の送付」(301~1000人、サービス)、「親御様向け資料配布、社内会議へのゲスト参加」(301~1000人、情報・通信)、「自社製品サンプルの郵送、新聞等メディアに取り上げられた資料の送付等」(300人以下、メーカー)などが、親を安心させるのに役立ちそうだという。中には「内定式前に実家に花と代表取締役のメッセージを送っています」(301~1000人、情報・通信)という企業すらあった。

しかし、対策を講じているのは2割程度と、まだ少数派。「必要とされれば、親への説明を行っているが、過去1名のみの実績」(1001人以上、メーカー)というコメントにあるように、親から説明を求められることは少ない。「テレビCMを検討中」(301~1000人、サービス)という企業もあるが、これは知名度アップが目的。「地元大学在籍の学生さんの親御さんに対して、地元での就職を喚起するプレゼン」(300人以下、メーカー)は、地元大学の協力を得て開く説明会のようだ。

親対策への問題意識がある企業からは、「親が知らない会社なので入社しないというのなら、『そうですか』というしかない。対策が必要なことはわかるが、そこまでする必要があるのかと自問自答中」(300人以下、情報・通信)、「担当者レベルからの提案はあるが、経営層が必要ないと判断した」(300人以下、情報・通信)というコメントがあった。「オヤカク」の重要性を採用担当者以外の人が理解するには、まだまだ時間がかかるのかもしれない。

もともと内定承諾書には「保証人」の欄があり、親が押印することが多い。これも一つのオヤカクといえる。だが、親が就活に関与する傾向は高まっており、企業としても人材育成の意欲を親にも伝えることが求められている。その意味で、人事や経営者からの手紙などは、オヤカクの有効な手段の一つ、といってもいいかもしれない。

佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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