ロウソクが実は成長産業であるという意味

衰退産業をよみがえらせる「意味の革新」

次に取り上げるのは「ベッド」です。日本と同じく、欧州でも高齢化は大きな社会的関心事。当然、ビジネスの世界でも、需要の変化に神経をとがらせざるをえません。

一般にはあまり知られていないかもしれませんが、家具業界におけるイノベーションを振り返ると、第一に挙がるのが、リビングルームの「リラックス化」。ソファにきちんと座る姿勢から、足を水平に伸ばせるソファが普及したのです。

この「リラックス化」が、時を経て影響を及ぼしたのが「バスタブ」です。ジャグジーのタイプが代表格で、シャワーボックスも、「体を洗う空間」から「リラックスする空間」へと変わってきました。また、キッチンにもイノベーションがありました。狭い閉じたスペースで単に料理をする場から、家族と会話しながら料理をし、その周囲で食事をする「コミュニケーションの場」への転換です。

こうした変化の一方で、「寝室」には大きなイノベーションは何十年も起こりませんでした。快適なベッドで眠る、就寝前に読書がしやすい、といった小さな工夫はたくさんあります。しかし、それ以上の変革はなかったのです。この空間に、高齢者社会を見据えてイノベーションを仕掛けたのが、ポーランドのヴォックス社という家具メーカーです。

高齢者は、寝室で過ごす時間が多くなります。それも外とのコミュニケーションから隔離されています。何らかの運動を促す装置がついたベッドもありますが、「孤独感の解消」には役に立ちません。

そこでヴォックス社が狙ったのは、10代の若者たちが自分の部屋に友人たちを誘い、コミュニケーションの場にするように、高齢者が寝室を「ソーシャル化の場」とすることでした。

そこには脱いだ靴の収納スペースがあり、ベッドの周囲には本棚が設置されています。家族や孫たちと一緒に大きなスクリーンで映画を観賞できる仕掛けもあります。結果、この商品によって、家族経営のヴォックス社は、ヨーロッパで市場を拡大することができたのです。

このように「意味のイノベーション」は、ビジネスパーソンになじみのある「ブルー・オーシャン戦略」と近く、同じモノサシのところで性能や価格の競争に明け暮れるのではなく、新しいモノサシを自らつくることなのです。

人々が「期待していなかった」喜びに意味がある

イタリアの調理道具を中心とした雑貨メーカー・アレッシィ社は、カラフルで独創的なカタチの製品イメージから、イタリアデザインの代表格とみなされているメーカーの1つです。

同社の「アンナG」という商品は、1994年に発売されて以来、ロングセラー商品となっています。一言で言ってしまえば、「ワインのコルク抜き」なのですが、もちろんただのコルク抜きではありません。アンナGは、コルクを抜くという、食卓での「あまり面白くない作業」を「みんなが喜ぶシーンの演出道具」に変えたという点で、画期的な商品でした。

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