韓国の若者がこぞって「公務員」を目指す事情 「希望」を失いつつある若者世代の閉塞感

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「何年も就職浪人してしまい両親に申し訳ない思いでした。私が幼い時に両親は私にどんな思いを託していたのだろう、きっと幸せであることを望んでいただろうと、幼い時の写真を見ながら自分に言い聞かせていました。公務員試験の勉強に費やす時間を、絶対に無駄なものではなく、自分に投資した時間にするためには合格しなければいけないと思って勉強しました」。念願かなって公務員になった彼女は、今の環境にとても満足しているという。

呉さんのように晴れて合格できた人もいるが、そうでない人のほうが圧倒的に多いのが現実だ。前出の李さんが言う。「『公試族』は他につぶしがきかないですから、結局、時間を浪費して引きこもりや世捨て人のようになってしまう人もいます。そんな不安も抱えながらみんな勉強しています」。

李さんには、5年間司法試験の受験生をして、結局あきらめた先輩がいたが、「最近どうしているかなあ、と連絡をとってみたら、なんと『アパート経営者になった』と言うんです。僕のように考試院でアルバイトしていたら、そこの経営者に「君には資質がある」と言われたそうです。それでその気になり、アルバイトで貯めたおカネに加えて、親からも借金して小さな考試院を建てて、その経営者に収まったそうです。人生わからないなあ、と思いました。あっ、でも、僕はやはり公務員になりますよ(笑)」。

悩みが深まるばかりの韓国の若者世代

韓国では、2010年代初頭には、就職ができないため「恋愛」「結婚」「出産」ができない20~30代を「3放(放棄)世代」と言っていたが、やがて「就職」「家」もあきらめた「5放世代」となった。

それが最近ではついに、長い就職浪人で友人とも連絡を絶つなど「人間関係」をあきらめ、「希望」も捨てた「7放世代」とまで呼ばれるようになった。若者の閉塞感が深刻であり、改善されるどころか悪化してさえいることが伝わってくる。

先の呉さんは言う。「文在寅大統領の政策が一般企業にも広がって、こんな言葉がなくなるといいのですが……」

ただ、民間企業も視野に入れた非正規職の縮小など、文大統領の政策に一般企業は困惑ぎみという報道も流れる。将来に強い不安を抱く若年層からの期待を集める文大統領だが、実際に就職難などの問題は改善されるのか。少なくとも、政策に関する評価は早ければ今年下半期にも表れる。

菅野 朋子 ノンフィクションライター

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かんの ともこ / Tomoko Kanno

1963年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務、『週刊文春』の記者を経て、現在フリー。ソウル在住。主な著書に『好きになってはいけない国』(文藝春秋)、『韓国窃盗ビジネスを追え』(新潮社)がある。

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