韓国の若者がこぞって「公務員」を目指す事情

「希望」を失いつつある若者世代の閉塞感

塾の関係者は公務員人気の背景についてこう話す。「長引く不況による就職難で、民間企業への入社をあきらめて公務員試験に挑戦する人が増えているだけでなく、若者たちの働くことへの意識も変化しています。残業などでストレスの多い民間企業を最初から避ける傾向が顕著になってきています」。

公務員の魅力はどこにあるのか

また、「公務員は年金はもちろん、大企業並みのさまざまな福利厚生も得られます。しかも一般企業の場合、50歳前に役員に昇進できなければほとんどが会社を退社せざるをえませんが、公務員なら60歳の定年を迎えるまで雇用が保障されるというその安定性に魅力を感じているようです」。

2013年(李明博元大統領時代)には、高校卒業者に有利なように、試験科目に大学での専攻科目の行政学や行政法のほか、高校教育で学ぶ社会、化学、数学が加わり、このため、高校卒業者の志望生がぐんと増えたという。

さらに、2012年には公務員試験を受ける年齢制限が廃止されたことから、最近では30~50代の「公試族」も出現している。実際に今年、58歳の合格者が出たことで、話題も呼んだ。

しかし、「公試族」は増加しても、公務員の採用枠はそのまま。そのため競争倍率は高まる一方で、公務員試験準備生の中で合格する割合は、わずかに2%ほどだ。文大統領が警察などの分野で公務員採用枠を広げると発表した背景には、こんな過酷ともいえる公務員試験の現実がある。

「ノリャンジンでは至る所に「公試族」向けの塾講師を宣伝する「のぼり」が立っている(筆者撮影)

「公試族」を象徴する街が「鷺梁津(ノリャンジン)」だ。ソウル市内中心部から電車で20分ほど。ここの水産市場はソウル随一といわれ、かつては大学入試のための塾が集まる街としても知られた。それが激変したのは2000年代半ばからで、大学入試に代わって公務員試験のための塾が次々と開校した。この一帯には、「公試族」が住む考試院とよばれる自炊ができるアパートのほか、若者好みの飲食店やカラオケ店、ビリヤード店なども軒を連ねている。ちなみに、考試院の「考試」は司法試験などの国家公務員上級試験のことだ。

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