ル・マンでジャッキー・チェンが活躍した理由 優勝したポルシェに続き、トヨタを下した

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予想外のトラブルに見舞われたトヨタ8号車(写真はトヨタ自動車提供)

優勝したポルシェ2号車と8位のトヨタ8号車はいずれもモーターのトラブルで後退を余儀なくされた。特にトヨタ8号車は前輪周辺から煙を上げながらのピットインで、周囲を騒然とさせた。これによりポルシェ2号車は56位、トヨタ8号車は54位まで順位を落とした。

2台の命運を分けたのは修理時間だったかもしれない。ポルシェは1時間と少しでレースに復帰したのに対し、トヨタ8号車は修復に2時間を要した。

残る3台も、トップを快走していたトヨタ7号車がクラッチトラブル、9号車がアクシデントで夜中に姿を消すと、代わって首位に躍り出たポルシェ1号車はエンジン油圧トラブルで日曜日の昼に息の根を止めた。

ハイブリッド技術はル・マン24時間にはまだ早い?

ル・マン初観戦の、トヨタの豊田章男社長(写真:筆者提供)

1号車のリタイアについてポルシェは高温が原因のひとつとしている。トヨタ8号車のモーターも、あの煙を見るかぎり熱が関係しているだろう。ポルシェ2号車のトラブルもモーターだ。レース後にトヨタの豊田章男社長は、「ハイブリッド技術はル・マン24時間にはまだ歯が立たない」というメッセージを残しているが、うなずける部分はある。

もちろん条件はLMP2も同じだ。しかしこちらはモーターもターボも付いていないシンプルな構成であり、限界まで性能を追求しているわけではない。エンジンは初物だが、会社はザイテック時代から百戦錬磨の猛者である。この程度の状況は想定内だったのかもしれない。

それにしても日曜日の昼、多くの観客がポルシェ3連覇を信じていたとき、いきなりトップがLMP2、しかもジャッキー・チェン率いるチームに入れ替わったのは衝撃的だった。

ジャッキー・チェン DC レーシングチーム、スタート前の様子(写真:筆者提供)

レース前、東洋的なカラーリングの脇で中国の国旗が振られるシーンを見ながら、トヨタやポルシェ、アルピーヌなどとは違う感想を抱いていた筆者だったが、上位をキープしながら周回を重ねる姿を見ながら、気持ちが変わっていった。

トヨタの敵はポルシェだけではない。自然の前には人間は無力であることをモータースポーツの場でも思い知らされたし、プライベーターを別枠扱いするのは誤りであることもわかった。

日本人のひとりとして、来年はトヨタが表彰台の中央に立ってほしいとは思う。しかし、そこに日本以外のアジアのチームが立つ可能性もあることを教えられた。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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