ル・マンでジャッキー・チェンが活躍した理由 優勝したポルシェに続き、トヨタを下した
今年優勝したポルシェ2号車の周回数367周は、昨年4位に入ったLMP1アウディR18と同一だ。これは序盤にトラブルで順位を大きく落としたためである。レース中の1周のベストタイムで見ると、LMP1トップはトヨタ8号車の3分18秒台で、昨年も最速だったトヨタより約3秒速い。ポルシェも同等だった。
一方、LMP2最上位同士で見ると、今年2位のジャッキー・チェンDCは366周で、昨年5位のアルピーヌA460の357周から10周近く上回っている。ラップタイムは3分28秒台と、実に約8秒も速くなった。この1年でLMP1とLMP2のタイム差はおよそ15秒から10秒に縮まったのだ。
ル・マンにはこのほか、市販スポーツカーをベースとしたマシンで争われるLMGTEクラスもある。こちらは今年クラス優勝したアストン・マーチン・ヴァンテージ、昨年優勝のフォードGT共に340周で、ベストタイムは3分51秒台から50秒台へと、約1秒アップにとどまっている。
昔のル・マンの精神を受け継ぐ存在
コース脇で見ていても、LMP1とLMP2のスピード差が思ったほどではなかったのとは対照的に、LMP2とLMGTEの違いは歴然としていた。
メーカー間の戦いの場となっているLMP1に対し、LMP2は多くのプライベートチームがレースに参戦できるよう、コストを抑えているのが特徴だ。「偉大なる草レース」といわれた昔のル・マンの精神を受け継ぐ存在といえる。
そのためエンジン、シャシー共に供給元がいくつか決まっており、48.3万ユーロという上限価格まで定まっている。もちろん性能面でもLMP1とは大差がある。
ここだけ見ると上位進出は望めないように見える。ところが今年のLMP2はエンジンが一新されていた。昨年までは日産自動車などが供給していたが、今年から英国のギブソン・テクノロジー社製に統一された。最高出力は600馬力と、LMP1の900〜1000馬力にはまったく及ばないが、昨年から50馬力増しており、当初から速さが話題になっていた。
ギブソンは1980年代からモータースポーツ向けエンジンやシャシーなどを開発・供給してきたザイテック・エンジニアリングが、2014年に社名を変えたものであり、ル・マン経験も豊富だ。
ジャッキー・チェンDC自身がマシンを用意してル・マンに参戦するのは今年が初だが、実は昨年もアルピーヌの1台は同じチームが走らせていた。さらにジャッキー・チェンとジョイントする前のDCレーシングは、アジア各地を転戦するアジアン・ル・マン・シリーズで2015年にLMP3チャンピオンになっている。実績は積んでいたのである。
それでも順当に行けば、LMP1は大差をつけてLMP2に勝ったはずだ。そうならなかったのは天気が原因だと筆者は分析している。この時期のル・マンの平均最高気温は21度だそうだが、今年は土日ともに約30度に達した。これがLMP1マシンにダメージを与えたようだ。
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