アマゾンが「日本の小売り」を買う日は来るか ホールフーズ買収に日本企業が受けた衝撃

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冒頭のファミリーマート・澤田社長の発言に象徴されるように、ホールフーズ買収は日本の小売関係者にとって、決してひとごとではない。なぜなら日本においても、リアル店舗を持つ小売企業とアマゾンとの接点は、近年明らかに多くなっているからだ。

注文から最短1時間で商品を受け取れる超速便サービス「プライム・ナウ」(日本では2015年11月開始)では、今年4月からドラッグストアのココカラファイン、マツモトキヨシ、百貨店の三越日本橋本店との事業提携を開始。化粧品や日用品、高級総菜、和洋菓子などのラインナップを増やした。

川崎の「アマゾン・フレッシュ」専用倉庫から出荷されようとしているこちらのお刺身は「専門店グルメ」の商品だ(撮影:尾形文繁)

また、同月に提供が始まったアマゾン・フレッシュでは、アマゾンが自社で仕入れる一般的な食料品とは別に、高級肉の人形町今半、ロールケーキのモンシェールなどの商品を扱う「専門店グルメ」のコーナーを用意した。

注文があった後、参加する小売り側が川崎の物流センター内にある専用倉庫に納品、仕入れ商品と合わせて梱包し、配送する仕組みも整えている。

提携には小売り側もメリットを感じているようだ。ココカラファインのマーケティンググループ・郡司昇マネジャーは「ココカラファインを知らなかった顧客にも、新しいチャネルを通じて知っていただき、使っていただける」と期待を語る。冗談交じりに「将来を考えれば、うちもアマゾンに買収してもらったほうがハッピーかも」と話す小売り幹部もいるほどだ。

「日本ではまだ最強のサービスを提供できていない」

今のところ、アマゾンにとってこれら日本の提携は商品拡充の一貫という域を出ていない。ただ、米国での今般の買収劇を見れば、さらに一歩進んだ展開があってもおかしくはないだろう。

アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長もこう語る。「日本はアマゾンの世界戦略の中で非常に大事な国。GDPが大きいだけでなく、小売り、ITの分野が高度に進んでいる。ただ、日本の顧客に最強のサービスを提供できているかといえば、まだ道半ば。品ぞろえや値付け、配送スピードなどすべてにおいて、世界的なリソースを活用し改善していきたい」。

買収という形になるかはさておき、アマゾンが米国で加速するリアル店舗を巻き込んだ戦略は、遠からぬ内に日本でも顕在化してくるのではないだろうか。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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