激増の高齢者孤独死は「7割が男」という現実 既婚者でも「妻が看取ってくれる」は大間違い

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ただでさえ、男性は定年退職などで長年勤め上げた職場を離れると「人とのつながり」を失いがちです。そんな中、妻だけに依存してきた夫が、その後、万が一妻と死別や離別してしまうと、虚無感に支配され、引きこもってしまうことも多いのです。普通の日常生活を営もうとする意欲や生活能力を喪失し、自己の健康・安全を損なうことを「セルフネグレクト」といいます。内閣府が2011年にまとめた調査では、そんな状態にある高齢者は全国で推計1万人以上いるとされています(内閣府経済社会総合研究所「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査」)。

行政や自治体、地域などでは見守り活動など各種支援を展開してはいますが、そうした「周囲の支援をかたくなに拒否する」という例も多いと聞きます。誰かに頼るということができなくなっているのです。

ゴミだらけの部屋の中で、死後腐敗した状態で発見される人の中には、部屋の中に「自分を管理する」など自己を律する張り紙があることも珍しくありません。本人はその状態を脱しようという意思があるのです。しかし、問題は、すべてを自分だけでなんとかしようという別の意思が、皮肉にも本人を追い込んでしまうのです。ただでさえ、男は誰かに頼ることを恥だと思いがちです。愚痴や泣き事を言うだけでもいいのです。誰かとのつながりを遮断してはいけません。

自立心は「頼れる先を複数用意」して生まれる

誰にも頼らず生きることは決して自立ではありません。自立心は、誰の力もいっさい頼らないことではなく、頼れる依存先を複数用意できることで生まれるもので、依存先が1つしかないという状況のほうこそ憂うべきなんです。拙著『超ソロ社会』で書いた「ソロで生きる力」も、まさにそうした選択可能な依存先を用意できるよう「人とつながる」ことが大切であるとしています。

人は皆死にます。どういうふうに死ぬかはわかりません。重要なのは、「どう死ぬか」ではなく「どう生きるか」のほうです。未婚も既婚も関係ありません。誰もがソロになるという認識と覚悟を抱いて、若いうちから生きるうえでの自分のネットワークをつくり続けていくことが必要です。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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