マクラーレンが「2000万円カー」で躍進の理由 2シーターにこだわり、流行のSUVは作らない

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運転体験を重視する姿勢は、マクラーレンが主催するオーナー向けイベント「トラック・デイ・ジャパン」にも表れている。富士スピードウェイで毎年開催されており、昨年はオーナーたちの愛車70台以上が集結してサーキットを走った。

レーシングカンパニーとして50年の歴史があるマクラーレンは、たとえ市販車であっても、軽量、ハイパフォーマンス、スポーティにこだわるということは変わらない。「この哲学は妥協するつもりはない」(ナッシュ氏)。

マクラーレンの特徴の一つである「ディヘドラルドア」(記者撮影)

そうしたこだわりを実現するために重要なのが、車の重心位置だ。2人乗りスーパーカーであるマクラーレンの車は、座席のすぐ後ろにエンジンを載せるミッドシップ型。シートポジションもできるだけセンター寄りにするなど、車の中心に重心を置き、走行安定性を高めた。

こうした座席でも乗り降りがしやすいよう、通常のヒンジを使ったドアではなく、ディヘドラルドア(通称バタフライドア)を採用している。

最近は独ポルシェや伊ランボルギーニ、伊マセラティなどの競合スーパーカーメーカーが、世界的に人気の高いSUV(多目的スポーツ車)や、2シーターだけでなく4シーターへと商品群を広げている。価格もこれまでのモデルより手頃になった。こうした戦略が奏功し、高級車ブランドを以前より街で見掛けるようになった。

生産台数は「多くても年間5000台」

だが、マクラーレンは一線を画す考えを強調する。「台数を追うのは利益を出すうえで意味があるが、残念ながらブランドを希薄化させる。それは業界全体のリスクにもなる」とナッシュ氏は警鐘を鳴らす。

「SUVは軽量のスポーツカーといえず、われわれが手掛けることはない。マクラーレンは、エクスクルーシブでなければならない。希少性や独自性をつねに保つ。客もそれを求めている。駐車場がマクラーレンだらけというのは誰も求めていない」

なぜそこまで強気になれるのか。それは市販車に参入してわずか3年で黒字化を果たしたからだ。現在は年間1600~1700台を販売できれば利益が出る状態だという。昨年の生産台数は約3300台だったが、「今後2~3年で4500台、最大でも5000台に抑える」。希少性を維持するために、ナッシュ氏は生産自体を制限する考えを示した。

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