一方で、新製品の開発スピードも緩めない。開発投資額は2015年に利益の30%に上ったが、今後も利益の20~25%という高い水準の開発費を投じることで、新車を市場に出していく考えだ。「しっかり投資するから良い製品ができて、良い製品ができるから売れて、売れるから投資ができるという好循環にある。あえてSUVで利益を狙いに行く必要がない」(ナッシュ氏)。
さらにマクラーレンの特徴に挙げられるのが、オーナーの平均年齢だ。同社の場合は40代半ばから後半が中心で、客の高齢化に悩むほかのスーパーカーブランドよりも若い。
その理由についてナッシュ氏は、若い会社であること、伝統的メーカーでないこと、そしてテクノロジー主導で製品開発していることを挙げる。「若い人は特にイノベーションやテクノロジーに興味がある。たとえば、われわれはカーボンファイバー(炭素繊維)のスペシャリストだ。超強硬度で超軽量の素材で車を軽くするほど、サーキットパフォーマンスは良くなる」と自信を見せる。
エントリーモデルが躍進を支えた
マクラーレンは現在3つの車種のシリーズを展開している。中でも昨年台数を躍進させた立役者が、入門モデルに位置づける「スポーツシリーズ」だ。同シリーズはマクラーレンを初めて購入する顧客が75~80%を占めており、まさに狙いどおりといえる。
ただ入門といっても、いちばん廉価な「540C(ファイブ・フォーティーC)」でも約2200万円と超高額だ。「もしほかのセグメントに参入するとしてもスポーツシリーズの価格を下回ることはない」とナッシュ氏。あくまでブランド価値を毀損するような価格設定はしないという姿勢を強調する。
スポーツシリーズの上に位置するのが、マクラーレンの中核モデル「スーパーシリーズ」だ。今年3月に発表した720馬力を発揮する新型車「720S(セブン・トゥエンティーS)」(価格は約3338万円~)は納車がすでに1年以上先という人気ぶり。こちらも新規客が多いという。
そして最上位のスーパーカーが、「アルティメットシリーズ」だ。同シリーズの「P1」は2013年に発表され、375台限定で販売された。さまざまなレーシングテクノロジーと3.8リッターV型8気筒ツインターボエンジンを搭載。“サーキットに最も近いロードカー”と称された。販売価格は実に86万ポンド(約1億2285万円)。現在は28台のP1が、日本のオーナーに渡っている。
F1から市販車へと”戦いの場”を広げてからまだ日が浅いマクラーレンだが、唯一無二のポジションを確立することはできるか。挑戦はまだ始まったばかりだ。
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