教職員が「部活」の長時間労働に苦しむ現実 土日は潰れ、授業のための時間も奪われる
部活動だけではない。若手は校内の掃除のため午前7時半に出勤しなければならず、上司は夜8時から平気で「明日までにお願い」と仕事を頼んでくる。「土日も出勤して頑張っている教員が偉い、休む方が非難される雰囲気だった」。副担任の仕事も増えてきた3年目の3月ごろ、ついに布団から起き上がれなくなった。薬をもらって仕事を続けていたが、6月ごろには医師から「絶対に休んだ方がいい」と言われ、適応障害の診断書を書いてもらい休職。9月中旬に復帰したが、もう一人の顧問が病気で入院し一人で秋の行事をこなした結果、体調は再び悪くなり、12月~翌3月まで2度目の休職をした。
「子どもが目の前にいるのに休めない」。担当の医師にそう話すと、「命と仕事、どっちを取るの?」と諭されたという。「帰ってもずっと仕事をしていたし、120%で教員をやっていた。今は7~8割くらいにセーブしているが、精神科医には半分くらいでも多いよと言われる」。病院に通い、力を抜くことを覚えた。現在も睡眠薬などを服用しながら何とか働いているところだが、校長は「来年は顧問をお願い」と言ってきている。
「部活動は教員の善意につけ込んだ仕組み」
「どちらかと言うと、私は土日も関係なく熱心に部活をやっていた側だったんです」。そう話すのは、とある公立中に勤務する40代教員・青木さん(仮名)だ。
現在は主幹教諭もしている教員歴20年以上のベテラン。校長に自ら直談判し、数年前から顧問業務を断っている。部活動に打ち込む一方で、自分の家庭が壊れていったからだ。「そもそも部活動は教育課程外の活動にも関わらず、学校の中でどんどん肥大化している。本来希望制であるのに、全員が顧問をするのが当たり前という風潮になっている」。厳しい口調でそう指摘する。
以前は部活が生きがいで、生徒と一緒に頑張っていた。生徒は当然勝ちたくて練習しているし、顧問としても勝たせてあげたいーー。大会や練習試合に比例する形で、練習の量は自然と増えていった。青木さんは顧問をしていた競技の経験こそなかったが、本やDVDを買ったり、専門家に会いに行ったりして「研究と勉強」でなんとかした。でもそれは決して特別なケースではないと言う。「教員は真面目で責任感がある人ばかり。子どものためと言われると断れない。部活動は教員の善意につけ込んだ仕組みなんです」。
「なぜ部活動を熱心にやらないのか」と言う職場の同調圧力、「もっと練習を入れて欲しい」と希望する生徒、負ければ「練習量が足りないからだ」と言う保護者からのクレーム…。気づけば部活動に多大な時間と労力が割かれて、しわ寄せは家庭にいった。「教員の本来の仕事である授業のためにに割くべき時間を一番奪っているのが部活動。学校の中で大きな顔して座っていて、ブラック化も甚だしい」と憤る。