「独り身大国」江戸と現代の知られざる共通点 コスプレに熱中、食事はデリバリーを頼む

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荒川:そうですね。だからこそ、長屋のようなコミュニティは、ソロ化するこれからの時代に必要なのかもしれません。

一方、江戸の独身男性と現代の「ソロ男」の生態系には、類似点も多いと思います。たとえば、江戸の独身男性はオタク的な趣味もたくさんやっています。ある意味、今のアキバと江戸って似ていると思うんですよ。

堀口:そうですね。江戸には今でいうオタクっぽい人が多くいました。浮世絵の絵師なんて、ずっと虫のことを観察していたりと「社会人としてどうなの?」と言いたくなるような人もいますが、とてつもない芸術作品を作っているんです。

荒川:現代においても、独身のオタクの人たちのパワーはすごいと思います。中には自己肯定感が低く、ネガティブで内向的な人もいますが、むしろ、だからこそ、ものすごいクリエーティビティを発揮する人が出てくる。

美人画は吉原に行けない男の欲望が生んだ?

堀口:浮世絵といえば、美人画を鑑賞するのは疑似恋愛ですよね。実際に吉原に行けない人のために美人を描いたものが最初なので、独身男性の欲望がベースにあるんです。

そういえば、コスプレも江戸時代にすごくはやっているんですよ。

荒川:そうなんですか!

堀口:仮装ができるかできないかで盛り場での人気度が違うので、頑張っていたみたいですよ。歌舞伎役者や、有名な歴史上の英雄などの仮装をしていたようです。男性も女性も。

いちばん大きな仮装のイベントは、吉原で1カ月間仮装パレードをする「吉原俄(よしわらにわか)」というイベントでした。そのときは花魁(おいらん)ではなく、吉原の裏方で働いている芸者たちが出し物をするんですよ。仮装をして踊ってと、まさにハロウィンのパレードみたいな感じです。

荒川:まさにハロウィンですね。

堀口:お花見でも仮装をやっていたみたいです。イベントの日に一生懸命仮装で趣向を凝らすというのはあの当時からすでにやっていたんですね。

荒川:歌舞伎役者のデフォルメされた浮世絵も、今でいうパロディ画ですよね。黄表紙も、今でいうラノベ(ライトノベル)やマンガですね。そうした芸術がどんどん生み出されたのは、やはり江戸中期以降のあの時代じゃないですか。

堀口:平和で戦争に行く必要がないから、文化面にやたらと力が行くんです。今を充実させるために貪欲な人たちだったので、今を楽しくしたいということでさまざまな芸術が発達したんです。

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