競馬の「馬主」に富裕層以外が増えているワケ 社長でなくても「競走馬を持てる」仕組みとは

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レースには賞金が設定されているので、所有馬が出走すれば馬主は活躍に応じた見返りが得られる。レースに出走して得られる賞金の80%は馬主に入る。ダービーの場合、1着の賞金は2億円で5着でも2000万円と高額だ。一般的には5着までに賞金が与えられているようにレーシングプログラム(出走する馬などを記載した一覧表)や新聞には書かれているが、6着から8着までにも賞金が出る。

さらに、レースに出走するだけでも「出走手当」が出るし、税制で優遇される面があることも見逃せない。競走馬を保有して一定期間登録し、レースにも一定の回数出走させれば、競馬にかかわる収支を事業所得として扱える。預託料は経費として計上できる。競走馬の購入代金も4年で減価償却できる。

馬主の「ロマン」はどこにあるのか

しかしながら、馬主は利益を上げやすいものかというと、やはりそうではない。一言でいえば「成功者の道楽」ということになるのだろう。昨今、企業のコンプライアンス強化が求められている中では、社長といえどもそう簡単に馬を持てる世の中ではないのかもしれない。

それでも、自分の持ち馬がGⅠを勝つような活躍をして、さらに種牡馬や繁殖牝馬となって自分の血統が残っていき、ファンに自分の馬が語り継がれることはうれしいはずだ。さらに種牡馬としてシンジケート(繁殖牝馬に種付けできる権利を複数人で分割して所有する仕組み)が組まれれば、毎年分配金が得られる可能性もある。そんなロマンが馬主にはある。

個人馬主に続いて、「組合馬主」を見ていこう。これは、3人以上10人以下がそれぞれ出資し、相互に契約して共同で馬主となる方法だ。個人馬主と比べて組合員の所得要件が低いために登録を受けやすい。各組合員の過去2年の所得が年収900万円以上で、組合財産として1000万円以上が必要となる。少人数で馬を分け合う形で所有して馬主活動をするのには適しているだろう。個人馬主と法人馬主に次いで2001年にできた。

最後に「法人馬主」を解説しよう。これは、競馬事業を目的とする法人を馬主として登録するもの。法人の代表者は個人馬主としての登録要件を満たす必要があり、法人の財務内容も審査される。法人馬主の代表者は馬主として一定の経験を積んだ者であることも求められる。

現在、個人で馬主になりたい人にとって、個人馬主と並んで大きな主流となっているのが、法人馬主の一種である「一口馬主」だ。株式会社の株主のように、一口馬主は40口から500口に細分化された競走馬の所有権を持つ。

一口馬主は、「クラブ法人」と「愛馬会法人」の2つの法人によって成り立つ仕組みだ。法人馬主としての資格はクラブ法人にある。少し難しい話になるが、一口馬主になりたい人は愛馬会法人の会員となって出資。愛馬会はその出資金を使って取得した競走馬をクラブ法人に現物出資する。

クラブ法人は競走馬をレースに出走させ、獲得した賞金を愛馬会に配当。配当された賞金が、会員たちに分配される仕組みだ。基本的には1頭を40口から500口に分割して出資を募る。出資者は馬の代金のほかに入会費用や月会費、厩舎や牧場での経費、保険料などを負担する。海外遠征すればその費用も出資者の負担となる。

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