競馬の「馬主」に富裕層以外が増えているワケ 社長でなくても「競走馬を持てる」仕組みとは

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ただ、金子さんの場合も「金子真人HD」の所有であり、北島さんと同じように厳密には法人が馬を所有する「法人馬主」ということになる。今回はその「馬主」の世界について、ひもといていきたい。

どんな人が馬主になれるのか。そこにまず関心を持つ人が多いのではないだろうか。中央競馬の馬主は「個人馬主」「組合馬主」「法人馬主」の3つに分けられる。

「個人馬主」になるためのハードルは高い

個人馬主の場合、まず「個人馬主登録」が必要になる。この登録には、どのような条件があるのかというと、過去2年の所得金額がいずれも「1700万円以上」あり、今後も継続的に得られる見込みがある人に限られる。1700万円には、一時的な所得や地方競馬の賞金など競馬に関する所得を含めることができない。つまり、宝くじや馬券で大もうけしても馬主になれるわけではないのだ。

1700万円以上の所得だけでなく、総資産額も「7500万円以上」なければならない。ここで、資産というのは国内の不動産、預貯金、有価証券のことである。保険証券やゴルフ会員権、海外不動産や書画骨董などは含まれない。もちろん負債があれば資産額から差し引かれる。

一般人には縁遠い金額だと言わざるをえないが、実はこれでも以前より要件は緩和されている。2013年以前は過去2年の所得が1800万円以上、総資産額は9000万円以上だったのだ。2009年からは国外に住む馬主も認められ、一定の要件を満たせば外国人も馬主になれるようになった。

以前よりもハードルは下がったとはいえ、やはり個人馬主になるのは難しいし、大変だ。だからこそ馬主になることは栄誉でもある。

もちろん、馬主になることで特典もある。まずは馬名の命名権だ。すでに使用されている名前や奇矯な名前、営利広告を目的とした名前は付けられないが、2文字から9文字の範囲で名付けることができる。思いを込めて名付けた馬がレースを走り、実況で名前を呼ばれるのはうれしいことだろう。

次が「勝負服」だ。勝負服という表現は、今でこそ一般的に使われるが、そもそもは騎手がレースで騎乗する時に着用する上着を指す。馬主は1種類の服色を決めて使用することができる。使用できる色や模様は決められているが、自らデザインした服を着た騎手が騎乗し、愛馬がターフを駆ける様子を楽しめるのだ。

競馬場で観戦する際も、馬主ならではの待遇が得られる。JRAの各競馬場には馬主専用の観戦席や駐車場がある。所有馬が出走した時にはパドックの馬主エリアへ入場できる。愛馬の調教を見たくなれば、茨城県の美浦(みほ)村と、滋賀県の粟東(りっとう)市の東西2カ所にあるトレーニングセンターに入場することもできる。所有馬が勝てば、表彰式で記念撮影もできる。全国には10の馬主協会があり、入会すれば会員同士の交流がある。また、協会では社会福祉活動も行っている。

とはいえ、個人馬主として競走馬を購入し、維持するのは、経済的に簡単なことではない。馬をセール(競走馬の競売)などで購入するところから始まるが、日本軽種馬協会のセレクトセールでは1億円以上の馬も数多く取引される。購入してからは当然、牧場や厩舎に馬を預けて飼養管理するための「預託料」がかかる。JRAの厩舎の場合、馬主と調教師が直接契約する。支払う預託料は1頭あたり1カ月60万円から70万円ほどだ。

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