ドッグフードは「薬」として進化を遂げていた 犬向け「療法食」の効果は人間向け以上

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犬の歯の構造や腸の長さ、唾液に炭水化物を消化するアミラーゼが含まれていないことなどからも、犬は本来肉食であることがわかっています。そして犬の祖先であるオオカミなど肉食動物は、加熱していない食べ物を食べる、いわゆる”生食”であり、犬にとっても加熱した食品よりも生食のほうが消化吸収に負担がかからないという結果も出ているのです。

こうした「肉食」「生食」を研究して作られているニュージーランド産のK9ナチュラル、犬が本来食べるべきフードを研究し、消化に負担がないよう作られているZiwiPeak(ジウィピーク)、ブッチなどといったナチュラル志向のフードも、現在では多く販売されるようになっています。

犬のがん療法食は、ヒルズが実用化させています。

ワンちゃんが動物病院でがんだと診断されると、病院がヒルズのがん療法食を問屋から仕入れて処方します。

この療法食は糖質を限界まで抑えたもので、糖質しかエネルギー源にできないがん細胞を兵糧攻めにするものです。

手術などほかの治療を施すことができない場合でも、この療法食により、がんを患ったワンちゃんの寿命は最大で300日延びるのです。つまり、がんのワンちゃんを約1年間、延命させる効果があるわけです。

1年と聞くと、「短い」とお思いの人もいるかもしれませんが、犬の1年はかなり長いものです。

子犬は1歳になると、人間でいうと18~20歳に当たります。成犬になると、年齢が1歳増えるごとに、人間の年齢では4歳ずつ増える計算です。

たとえば、8歳の犬を人間年齢に換算してみます。最初の1年で人間でいえば20歳になり、後の7年は7×4で28歳増えますから、合計で、人間年齢の48歳ということです。

このように考えると、成犬の1年は、人間の4年と同じ意味になります。すると、がん療法食でワンちゃんが約1年の延命をすれば、人間では4年も延命したのと同じということなのです。

もし、末期がんの人が、ある食事を食べることで4年間、延命できるとしたら画期的です。開発に成功すれば、またたく間に世界中に普及するでしょう。

ところが、犬の世界ではがん療法食が、もう、現実となっているわけです。

犬に多い尿石も改善

犬は尿石になりやすい動物で、動物病院に来る犬に最も多い病気の1つが尿石です。

ドッグフード大手メーカーであるアメリカのヒルズや、フランスのロイヤルカナンには、尿石を治療するドッグフードがあります。

これを食べるだけで、ワンちゃんの尿石が消えていくのです。

人間の尿石の場合、それを食べるだけで石が消えるなどという便利な食事はありませんから、この療法食についてもドッグフードは人間用の食品よりも進化している証拠だといえるでしょう。

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