ドッグフードは「薬」として進化を遂げていた 犬向け「療法食」の効果は人間向け以上

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ところが、犬の食事の世界では、すでに「がんに対応したドッグフード」は存在していて、実用化されているのです。これはもう15年以上も前のことです。

つまり、犬のがんは、食事療法で延命が期待できるわけです。

このことは、動物病院で愛犬のがん治療をしている飼い主さんはご存じでしょうが、一般にはあまり知られていません。

犬の病気を食事で治療できるのは、がんだけではありません。

肥満、皮膚病、尿石、腎臓病、糖尿病、心臓病、肝臓病、認知症……など、動物病院で診断されるほとんどの犬の病気には、それを治すための専用の食事があるのです。

犬の治療食が人間向けよりも発達したワケ

なぜ、人間の食事よりも犬の食事のほうが進化しているのでしょうか。

人間の食事の場合、人権の問題があり、極端な実験はできません。安全性の疑わしい食事を、やたらに試食させてしまえば、「人体実験だ」といわれてしまいます。

ところが、犬の場合、どんな食事を試食させても、人権問題は起こりません。実験ができるため、科学的な研究がやりやすくなります。

もっとも、実際には動物保護の法律がありますから、何でも実験できるというわけではないのですが、それでも、人間の場合よりは制限がかなり緩くなります。

このため、ドッグフードのメーカーでは、長年、科学研究を重ねて膨大なデータを得ており、ドッグフードの機能性は病気の治療まで可能になっているわけです。

たとえば、フランスのロイヤルカナンやアメリカのヒルズでは、徹底的な研究を積み重ねています。私はどちらの企業にも身を置いたことがあり、両企業の研究機関と工場を自分の目で見ています。

どちらの企業の研究所でも、あらゆる種類の犬種が飼育されていて、さまざまな食事を与えられており、データを取っていました。フードの内容や形状による違い、犬種ごとの違いなど、膨大なデータを蓄積しています。

栄養素に関する研究が行われているのはもちろんですが、私が驚いたのは、医療分野ごとに専門の研究セクションがあり、専門の獣医が研究をしていることでした。

たとえば、犬の歯科医がドライフードの形状について歯の健康の観点から研究し、理想のフードの形を見つけようとしているのです。

また、最近では、犬という動物は本来何を食べてきたのかという食性の観点からも、研究と商品化が進んでいます。

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