急縮小した保険の銀行窓販は復活できるのか マイナス金利が直撃、外貨建てに切り替え

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一方、米ドル建てや豪ドル建ての一時払い終身保険「サニーガーデン」を看板商品としている、外資系のメットライフ生命保険・リタイアメント商品開発マネジメント統括部の生稲隆部長は「銀行窓販の始まった2002年当時に外債や外貨建て投信が売れたかというと、売れなかった。だが、今は富裕層を中心に、資産の一部に外貨を持つことでクオリティを高めることができるという、外貨に関するリテラシーが向上している」と話す。

外貨建ての貯蓄性保険商品をめぐっては、今年4月に住友生命保険が販売を開始。明治安田生命保険も今年夏に外貨建て商品を投入する予定だ。

大手生保の中では、2002年の窓販解禁当初から参入している日本生命保険の収入保険料が、2015年度の7440億円から、2016年度に3403億円へ半減した。同社金融法人業務課の福冨敦夫課長は「5000億円ほどあった円建て終身が大きく落ち込んだことが響いた。主力の外貨建て定額終身保険に加え、昨年10月から外貨の変額年金商品も投入し、商品ラインナップを整えることを意識している」と話す。外貨建て商品の主力である定額終身保険「ロングドリームGOLD」は2015年7月に販売開始した。現在10%程度のシェアを、グループの三井生命保険も含めて20%に引き上げていくことが目標だ。

保険もリスク説明がさらに重要に

今後、日本国債の金利が上昇すれば、円建て商品の魅力が再びクローズアップされ、過去何度も起きたように、窓販市場の売れ筋が大きく変わることもありうる。

また、手数料開示や顧客への丁寧な説明が強化される流れの中で、どこまで顧客のニーズや特性に合った商品を販売できるか。たとえば、きちんと説明して販売したとしても、将来受け取り時に円高が進行するなどで、運用成績が悪いと、トラブルの種にもなりかねない。

銀行窓販解禁から今年で15年。保険販売の主要チャネルの1つとしてすっかり定着した銀行窓販は息長く、さらなる成長を遂げるのか。それは保険各社や銀行のこれからの行動に懸かっている。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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