「自宅葬」がここへ来て見直されている理由 残された人が納得できる弔い方とは何か
マストにとらわれない、納得感を重視した弔いの形として近年増えている例がもうひとつある。「お別れ会」だ。前出の鎌倉新書では、一昨年からお別れ会のプロデュースサービス「Story」を始めた。かつては芸能人がやるものというイメージだったお別れの会だが、問い合わせが増え、一般へも広がりつつあるという。
故人を偲ぶ機会を持ちたい
本をたどれば、葬儀の小規模化が要因のひとつといえるだろう。
「そういえば最近お葬式って出てないな」と感じる人は多いのではないだろうか。新聞や社内報の訃報でも「葬儀は近親者のみで執り行います」の文字を目にすることが多い。参列できない人が増えれば「落ち着いた頃でもかまわないから、故人を偲(しの)ぶ機会を持ちたい」というニーズが生まれる。
「Story」の場合も自宅葬と同じように、「マスト」にとらわれず、故人のことをヒアリングするなかで、テーマやコンセプトを作っていくという。
「Story」のプロデューサーで鎌倉新書事業開発部の井野貴亮さんが話す。
「亡くなった方との関係、出会いやお人柄、仕事などさまざまなことをお聞きします。1回の打ち合わせが3時間、4時間になることも。初めは『やらなきゃいけないんだけど、どうしたらいいか』と相談にこられた方でも、話を聞くうちに『こうしたい』というウォンツが出てくる。それが私たちのやりがいでもあります」
野球が好きだったお父さんのお別れ会では、献花の代わりに野球のボールを使って献球をした。海が好きだった人のお別れ会では、会場としてみなとみらいのドックを会場にする提案をしたこともある。その人らしさを大切に、思い出を分かち合う時間を作り出す工夫をする。
お別れ会は、四十九日が終わったあとから、亡くなって半年後ぐらいまでのタイミングで行われることが多いそうだが、一周忌、三回忌といった節目に行うことももちろんできるだろう。
直葬に対する後悔がある場合、あらためてお別れ会を設けることが、一歩踏み出す区切りとなるかもしれない。前出の西本さんが言う。
「葬儀やお墓は、『つながり』の装置。故人のためだけでなく、生きている人にとっても必要なものなんです」
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