日・仏母親の人生を分ける「1日83分」の格差 フランス人はなぜ共働きで高出生率なのか?

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内閣府の調べによれば、6歳未満の子どもを持つフランス人男性が家事や育児をする時間の平均は1日当たり2時間30分。一方、6歳未満の子どもを持つ日本人男性の平均は1時間7分で、家事などに割く時間の差は、なんと83分。フランス人男性が日本人男性の2倍以上になっている(2014年の内閣府男女共同参画局調べ)。

知人のフランス人女性が仕事を離れていたとき、彼女の夫は仕事から帰宅した後、毎晩幼い2人の子どもに本を読み聞かせていた。「妻は昼間子どもの世話をして疲れているだろうから、夜は私が子どもの相手をして妻を休憩させたい」と言う。朝は、1人でパンや飲み物などの朝食を取って出勤していた。

別のフランス人男性の知人は、週末の朝、家族の中でいちばん早く起きて焼き立てのクロワッサンやパン・オ・ショコラをパン屋へ買いに行く。朝食後は家じゅうの掃除をする。生サケを蒸し、サラダを作って昼食を整える。午後は、妻と一緒に車で食料品や日用品の買い物に出かける。ワイシャツにアイロンをかける。夕食には炭火を起こしてバーベキューをして肉を焼く。

この知人夫婦は共働きで、3人の子どもを育てている。週末に積極的に家事をする理由について、彼は「平日はどうしても妻に負担をかけてしまうので、週末は少しでも楽をさせたいから」と話す。

フランス共和国の標語は、「自由、平等、友愛」だ。この文言を、フランス中至るところで目にする。区役所や公立の学校の正面に刻まれているほか、税金の通知など公的な書類にも印刷されている。フランスの夫婦は、共同で家計を支え、子どもの教育に責任を持ち、家事を分担する。「フランスでも男女はまだ平等ではない」という知人もいるが、平等の精神は夫婦関係にも反映されているように見えた。

妻を思いやり、妻の負担を減らそうとするフランス人男性の姿に私は大いに感心していたが、日本に住むフランス人女性は「フランスでは、共働きならば家事や育児を分担するのは当たり前」と言う。フランスでは、料理や洗濯をする父親は「イクメン」などではなく、普通の父親なのだ。

日本の母親は、子の結婚=育児からの解放?

最近結婚した20代の息子を持つ、ある日本人の母親がこんなことを言っていた。

「息子の世話をしてくれる人ができて良かった」

これまで会社勤めをする息子の食事の用意や洗濯は、母親が担っていた。結婚後は、嫁がそれをしてくれるから安心したというのだ。

父親の家事・育児参加度にこれほどまでの「格差」がある背景には、いったいどのような事情があるのだろうか。

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OECDの15歳から64歳の男女を対象にした調査(2014年)によると、日本人男性の1日当たりの平均労働時間は、375分。データが得られた加盟国の男性の中でいちばん長い。一方、フランス人男性の労働時間は、173分と最も短い。

フランス人男性が家事や子育てにかかわることができる理由の1つは、労働環境にゆとりがあるからだろう。睡眠時間は、日本人女性はデータが得られた加盟国の女性の中では最も短い、1日当たり456分。日本人男性も、男性の中では韓国に次いで短い472分だ。日本は女性も男性も、休息の少ない状況になっている。

最近では、日本でも、抱っこひもを使って赤ちゃんを抱っこしたり、ベビーカーに子どもを乗せて保育園に連れて行ったりする若い父親を見かけることが珍しくなくなってきた。より多くの父親が家事や育児に関わることを可能にし、ワンオペ育児を解消するには、社会全体が働き方を見直す必要があるだろう。

国末 則子 フリーライター

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くにすえ のりこ / Noriko Kunisue

フリーライター。東洋経済新報社、朝日新聞記者を経てフリーライターになる。2001~2004年、2007~2010年の2度にわたってパリに滞在し、2人の子どもを現地校に通わせた。著書に『パリの朝食はいつもカフェオレとバゲット』(プレジデント社)。
 

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