東京随一の「名物商店街」を襲う変化の荒波 タワマン街化を選んだ武蔵小山の未来

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地元の不動産会社によると、「駅直結でいちばん高い2階でも坪単価4万円程度と、賃料自体が飛び抜けて高くなったわけではない。が、入居時に内装監理負担金(自店の内装工事費とは別途)やオープン販促費、そして開業後には管理費、共益費に加え、販売促進費などがかかるとされ、毎月家賃プラス1坪当たり1~2万円近くの出費もありうるかもしれない」という。

2年前の出店を決めるべきタイミングでは、共益費などの額が決まっていなかったため、個人店は出店を躊躇したようだ。結局、駅前に戻ってくるはずだった店の多くが、戻ってこなかったのだという。

チェーン店でさえ残れるか微妙

写真右手の細長い建物が駅ビル。現在地下の工事が進んでおり、その向こうに細長く見えるのが商店街のアーケード。工事中の区画の手前側の、元飲食店街も今後取り壊され、再開発が始まる(筆者撮影)

ほかの再開発事例を見ても似たようなケースが多い。商業施設オープン当初は、地元の店が多いものの、最初の契約終了時点で退去、あるいは、他店に店舗を貸してしまう例が多いのは、金銭的な問題が理由だ。再開発によって町の価値や住宅価格が上がり、テナント料が上がったからといって、1杯800円だったそばを1000円にして出すわけにはいかない。結果、どこにでもあるチェーン店が進出してくることになるのだ。

武蔵小山の場合、チェーン店ですら出店し続けられるとは限らない。2017年に完売した目黒側東側の再開発ツインタワーは坪単価600万円に上り話題となったが、武蔵小山もそれには及ばないものの、坪単価400万円超はいくのではないかとうわさされている。70平米の住宅だとすると、販売価格は8500万円程度。こうした物件を買う人たちが、チェーン系の店を日々利用するかはわからない。

武蔵小山であれば、白金や麻布十番、赤坂など美食の集まる都心にはすぐ行ける。であれば、地元では消費せず、都心に出向く人が増えても不思議ではない。再開発がもくろむ商店街の「新たな顧客開発」がうまくいくとは限らないのだ。武蔵小山商店街振興組合事務局長の尾村優太氏は2015年の読売新聞の取材に「アーケードはなくなりません」とコメントしているが、アーケード自体の形は残るとしても、それが魅力的なものであり続ける保証はどこにもない。

ところが、武蔵小山中心部でこうしてチェーン店が増える中、周辺ではここ数年、個性的な個人店が増え始めている。中心部を除けば、まだ家賃が安く、個人店出店の余地があるからだ。

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