大変身した新型iPadProは「買い」なのか ようやくファイルマネージャを搭載

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ハードウェア面では液晶パネルの画面更新が倍速の120Hzになったことも、ユーザー体験上、大きな違いを生んでいる。倍速化されることで”動きボケ”が大幅に低減され、たとえばウェブブラウザ画面のスクロールひとつとっても滑らか、かつスクロール中にもその内容を把握しやすくなっている。

この画面更新頻度は、たとえば映画再生では24Hzに落とされるなど、アプリごとに最適化できるよう設計されており、静止画などでは頻度を下げることでバッテリ消費を抑えることも可能な柔軟性の高いシステムだ。

手書き入力の体験も大きく改善

この倍速駆動とApple Pencilとの組み合わせでは、手書き入力の体験も大きく改善する。ペンシルからの入力に対し20ミリ秒で応答可能となり、細かな書き込みを行う際に自然な感覚を得られる。実際にハンズオン用端末で書き込んでみると、細かな絵を描く際のタッチはもちろん、漢字など複雑な文字をメモとして書き込む際のフィーリングが、段違いに良くなっていることを体感できる。

Apple Pencilと組み合わせて使うと利便性は一層高まる(筆者撮影)

こうしたApple Pencilの強化に伴い、iOS11側も活用幅の幅を拡げ、ペアリングしているApple Pencilをロック画面でタップすることで端末ロックを解除し、メモアプリを起動する機能も加わっている。

ここにGPU強化によるグラフィクス/写真系アプリのパフォーマンス向上も加わり、Apple Pencilによる体験レベルはさらに高まった。筆者は熱心なペン入力コンピューティングの支持者ではないが、このレベルにまで応答性、書き味などが向上してくると再検討したい。

新しいsmart keyboardの使い勝手やiOS11の日本語IME次第ではあるが、普段使いのモバイルコンピューティング環境として本格的に移行を検討したいと思える程度に、iPad Proの改良は進んだ。前述のように詳細なレビューをしないと結論は出せないが、iPadのオリジナルコンセプトを拡張し”モバイルPC側に寄せた”iPad Proの商品企画は、ここに来て花開く可能性がある。

もちろん、「昨年の段階で、このぐらいのレベルにまで煮詰めておくべきだったのではないか」という批判も出てくるだろう。とりわけファイルマネージャとドラッグ&ドロップによる操作は、iPad Proが目指した商品性には必要不可欠なものだ。昨年やり残したことを今年やっと取り戻すだけという言い方もできる。

だが、ハンズオンコーナーで実際に手にしてみると、タブレットの拡張を行うだけでなく、モバイルPCとは異なる視点での進化を示しているように感じられた。確かに”モバイルPC側に寄せた”コンセプトは既定路線の踏襲であり、イノベーターとして期待されるアップルには期待外れの烙印が押されるかもしれない。しかし、そこにはまだ従来のタブレットもモバイルPCも到達していない地平があることも感じられた。

このアップルのチャレンジが成功した時には、iPadがNetbookを駆逐したように、iPad Proは一部のWindows搭載パソコンが持つ市場を(もちろん自社ラインナップのMacbookも)奪うことになるかもしれない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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