5日間で会社が変わる「短期集中会議」の凄み グーグル発「スプリント」の驚くべき効果

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競争が厳しい中でよりスピーディに製品を市場に投入することが生き残りに直結するという理由もある。特にスタートアップの場合、資金がなくならないうちに競合他社より先に製品を販売し、その新たな市場でトップに立たなければならない。GVがユニークなのは、デザインを活用することによってより早く市場に製品を投入しようとしていることだ。

――スプリントの肝は5日間という「超短期集中」にあると思いますが、参加者がまるまる5日間スプリントだけに勤務時間を費やすと考えると結構大変な気もします。

ブルーボトルコーヒーで実際行われたスプリントで、参加者からあがったアイデアの数々(ダイヤモンド社刊『SPRINT最速仕事術』より)

だいたいみんなそういうリアクションをするよ(笑)。多くの人が「確かにスプリントで成し遂げられることを考えると5日間は短いが、5日間をそれだけに使うのはとても難しい」と言うが、それはスプリント以外の仕事を「本当の仕事」だと思っているからだ。これに対する答えは、今からやろうとしているスプリントこそが最も重要な本当の仕事だということだ。

しかし、それを実感するのはスプリントを始めて、プロジェクトの目標が定まってからかもしれない。そこからは、最終日の締め切りに向けて日々の課題をやり抜くしかない。

通常、何か新たなプロジェクトに取り組んだ場合、決断をしてその決断に自信を持つのに何週間も何カ月もかかる。スプリントの場合、(プロトタイプが)失敗したとしても、翌週また次のスプリントをやればいい。それで製品に対する自信が持てるのであれば、通常のやり方でやるよりずっと早い。多くの人はこれを経験して5日間という長さに納得する。

失敗が起きやすいのは…

ジェイク・ナップ(Jake Knapp)/作家、IDEO客員研究員、1977年生まれ。ワシントン大学卒業後、オークリーやマイクロソフト、グーグルのデザイナーを経て、GVのデザインパートナーに。グーグル時代に革新的な開発プロセスであるスプリントを考案し、GVではそのメソッドを改良し、完成させた。2017年から現職(撮影: 今井康一)

――スプリントの長さを変えることには懐疑的ですね。

確かに期間を変更することには複雑な気持ちがある。スプリントの一部を抜き取って、通常の会議で実行することは悪くないと思う。が、たまに、最終日に行うプロトタイプのテストを省いたりすることで「スプリントを3日間で行う」とか、逆に「スプリントを2週間行ってプロトタイプを作る」という話を聞くがそれは感心しない。たとえば、後者の場合、2週間かけて見いだしたアイデアだとどうしても固執してしまう。そうなると、テストの結果が芳しくなくても、やってしまえ、ということになりかねない。

初めてスプリントをやる際には、本に書いてある順序、(著書の最後にある)チェックリストに従って実行するべきだ。そこから、自社に合うように少し変えたり、一部を抜き取ったりすればいいと思う。よく聞くのが、意思決定の部分だけスプリントを行うという例。多くの会議の目的は何かを決めることだと思うが、誰もそういうのは得意じゃないからね。

――著書には失敗例もたくさんでてきますが、いちばん難しいと思うプロセスは?

過去に自分が失敗した例で言うと、やはりスプリントを短くしすぎたことで起こる。プロトタイプを作る前、それをテストする前にスプリントが終わってしまうと、そのアイデアがよかったかどうかを判断できない。これまでたくさんのスプリントに参加してきたが、プロトタイプを作って「これはすごい! 絶対にユーザーも気に入るに違いない」と確信しても、最終日のテストでありとあらゆる問題が見つかり、挙げ句の果てにユーザーに「なんで作ったかわからない」とさえ言われることがある。

つまり、もしテストをしなければそういう反応もわからないまま、製品のローンチに向けてさらなる時間と資金を費やしてしまうことになる。

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