円安でもさらに値下げする、イケアの強み イケア・ジャパンのパルムクイスト社長に聞く

拡大
縮小

――すでに2014年中に立川、仙台に新規出店をして、20年までに現在の6店から14店体制にすると発表しています。イケア・ジャパンがここにきて出店ペースを早めているように見えるのは、拡大路線に舵を切る、という意思表示でしょうか。

拡大が目的ではありません。私たちが一番大事だと思っているのは、お客様がイケアで買い物をして楽しいなと思ったり、満足してくださったりすることです。出店を加速するとかしないというのは関係ありません。満足してくれるお客様が1人でも増えてくれれば自然と売上高やビジネスは成長するものです。それが出店にもつながっていき、コワーカーも成長するのです。

私たちイケアは、コワーカーにとって一番いい職場、働いていて良かったなと思う職場作りをしていくのが、絶対的に大事だと思っています。コワーカーに、ダイバーシティ(多様な働き方)や、ワークライフバランスをちゃんと提供できるかどうか。そこから生まれる充実が、ビジネスを成長させていくと思っています。

ただ、1つ大事なのは、立川と仙台に大型店を出店することで、私たちはボリュームを持った商品を生み出すことができるようになります。出店で販売数量を増やせれば、これまで以上に大量生産体制が組めます。新店だけではなく既存店舗もコストを下げることができ、お金を稼げます。それがさらなる低価格の原資になります。こうした循環の中で、私たちはビジネスを動かしているのです。

――ニトリをはじめ、国内の競合も出店を強化しています。

コンペティター(競合他社)の出店強化について、私たちはポジティブに受け止めています。なぜかというと、最終的にはお客様が満足して楽しい気持ちで買い物ができるかどうかというのが大事なので、そこを基準に考えるべきだと思っているからです。

お客様の満足には、必ず「低価格」が入ってくると思います。それを考えたときに、私たちイケアだけがプレーヤーでは意味がないのです。コンペティターが様々な展開を仕掛けてくる中で、イケアが「ベストプライス」や「ロウアープライス」を追求していくことで、イケアの低価格が成立します。だからお客様にとって選択肢が増えるのはいいことだと思っています。

イケアが日本市場に再上陸をした7年前を振り返ると、ホームファニシング(家具に加え、食器やカーテンなど「住」に関連する生活用品全般を扱う業態)という市場はもっともっと小さかった。その中でニトリさんもイケアもすごくがんばって、日本の家具市場全体が拡大してきたのは間違いないと思います。コンペティターと良い形で日本市場を拡大させてきました。

日本のお客様が、低価格で品質の良い商品をこの10年で手ごろに買えるようになった、つまりそれだけお客様の家の中を充実させてあげることができるようになりました。そういう商品が、いま市場にあるというのが一番大事なポイントで、このことは、コンペティターの存在があったからだと思っています。

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