円安でもさらに値下げする、イケアの強み イケア・ジャパンのパルムクイスト社長に聞く

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デザイナーが価格を決定する「イケア流」

――イケアの一番の強みは低価格でしょうか。

ただ単に値段を下げればいいというのは、イケアのポリシーではありません。イケアの商品には5つの大事な要素があります。「機能性」、「デザイン性」、「サステナビリティー(持続可能性)」、「品質」。この4つが全てそろった上で、5番目の要素として「低価格」があります。

例えば他社さんの商品にはすごく「低価格」だけど他の要素が欠けているものや、逆に「品質」や「デザイン」が一流でも、すごくハイプライスなものに偏っていることが多い。この5つを整えるのがイケアの商品で、他社との最大の違いとなります。

イケアのユニークさは、商品開発の現場にあります。私たちは自社デザイナーを抱えて商品企画をしていますが、その時にまずプライスからデザインしていくんですね。例えばソファで商品企画を考えたときに、まずデザイナーが2万9900円という値段を設定します。その後に、デザインを起こしてこういう商品はどうですか、とプロトタイプを作る。その時に5つの要素が整っているのか、もし1つでも欠けていればその商品は出すのをやめる。その繰り返しを行うのです。

イケアが低価格を実現するビジネスモデルとして、「フラットパック」という特徴があります。家具というものは、想像してもらえばわかると思いますが、すごく立体形です。そのまま梱包をすると空気ばかりを運ぶことになって積載効率が悪い。だから分解して小さく梱包・運送をできるように設計されています、これがフラットパックです。

デザイナーはどういう梱包をするかまで考えてデザインをします。そうすると、普通なら100個しか運べないものが、500個運べるようになる。最終的には2万9900円で企画した商品が、2万5000円で販売されるようになるのです。

一つ一つのプロセスでいかにコストを削減できるか、これはイングヴァル・カンプラード(イケアの創設者)がとてもこだわったポイントで、その精神が現在のイケアにも受け継がれているわけです。

私たちは1から100まで、全てイケアでやっているわけではありません。イスを作る場合はイスのスペシャリストの工場と一緒に作っていくことで低価格商品を実現できています。ただ、自社工場でなくても、一緒に工場従業員の効率を高める管理をしますし、もし私たちの求める品質が実現できない場合は、サポートをしながら改善していきます。

サプライヤーとはできるだけ長期の契約を結びます。そのことで、サプライヤーは工場側も設備投資をしやすくなる。ですから、イケアではよりよいものがローコストで作れるのです。ビジネスパートナーを巻き込んで、一緒に成長していこうというのがベースとなっているのです。

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