円安でもさらに値下げする、イケアの強み イケア・ジャパンのパルムクイスト社長に聞く
――足元では12年末から円安が急激に進んでいます。商品を海外から輸入するイケア・ジャパンにとって原価上昇の影響は決して小さくないのでは?
面白いことに、逆に1年前は円高の時はどう良い影響が出ているのかとよく聞かれました。為替というものはいつもアップダウンがあるものです。イケアはすごくロングターム(長期)でビジネスを考えていく企業です。
この夏に発表した新カタログでは、逆に300品目以上の新しい「プライスダウン」を披露しました。短期で見ると円安、円高というものはありますが、長期で考えた場合には持続可能な成長をしっかり見ていくのがビジネスの肝になると思います。
――家具業界では一部で値上げの動きが出ていますが、イケアに値上げの選択肢はないのでしょうか?
私たちが根源的に見ているのは、どんな外部状況になってもお客様に買いやすい環境を提供できているかという点だけです。限られたお財布の中で、より多くのお客様に5つのポイントを兼ね備えた商品を提供していけるかどうかに尽きます。低価格を提供することによって私たちが思った以上に、お客様がお越しくださっている。結果として、イケアはいま前向きな成長をしていると認識しています。
本国のマネジメントチーム(経営陣)では、「お客様が満足しているかどうかが、気付いたらビジネスの長期的な成長になるんだよ」とよく話しているんですね。もちろん短期的の利益を追って価格を上げるのは簡単ですが、長期では、お客さんの信頼を失います。
価格に関して最も重要なのは、お客様に対して毎回毎回正直でいられるかが大事なのです。正直でなければ、最終的には「イケアはあの時あんなに値上げをした」と言われてしまいます。信頼が本当に大事だと思います。
――長期的な経営の視点を保てるのは、イケアが株式上場していないということも関係するのでしょうか。
そうだと思います。株式上場をしているかいないかというのは大きな違いがあって、私たちは自分たちのペースで必要と思うことに迷わず進んでいける。日本ではもっともっとロングタームでビジネスを展開していくというのが、グローバル本社の意志でもありますし、株主や株価を意識しないでビジネスができるというのが、我々の強みであると思っています。
――ミカエル社長ご自身についてお聞きします。イケア・ジャパン以前には、フランスや中国のイケアなど様々な国にいらっしゃったそうですね。日本の家具マーケットや消費者に特徴はありますか?
最初はスウェーデンですが、その後中国、オランダ、フランスで経験を積みました。日本人の消費者は、本当に買い物に対して充実したサービスを求めていますね。そしてバリューフォーマネー(価格に見合った商品価値)への志向が、これまで経験してきた国と比べて、非常に強いと実感しています。
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