進むユーロ高、ECBは本当に「脱緩和」なのか 政治リスク後退だが、経済回復は本物か?

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6月理事会の注目点を順番に見ていこう。

まず、経済・物価の見通しには大きな変更はなさそうだ。6月は四半期に一度のスタッフ経済見通しの改定がある。前回3月は、実質GDP成長率が2017年1.8%、18年1.7%、19年1.6%、CPI上昇率は17年1.7%、18年1.6%、19年1.7%でわずかに上方修正された。今回は、実質GDPの見通しはわずかに上方修正される可能性があるが、CPIは、原油価格の想定の変更に伴い、やや下方修正されるかもしれない。

現在、ECBの資産買い入れの期限は「2017年12月まで、必要な場合はそれ以後」とされており、「物価目標に整合的な軌道への調整が持続的かどうか」を判断の目安としている。ドラギ総裁は、4月理事会後の記者会見で、この判断の定義を「強力な金融緩和がなくても目標水準にとどまるかどうか」と解説している。1.8~2.0%といわれるECBの安定水準のレンジを下回る6月の物価の見通しは、緩和縮小のペースアップを後押しするものではない。

結局は現状維持に落ち着く?

経済見通しのリスクバランスについても慎重なトーンを維持しそうだ。4月理事会では、議論の末に、景気について「下方」という判断を維持しつつ、「より中立に近づきつつある」、「(下振れリスクは)主にグローバルな要因に関係している」との文言を加えた。不確実性は高いが、方向は改善しているとのトーンを打ち出した形だ。

グローバルなリスクとしてECBが特に警戒しているのが、米国のトランプ政権の政策をめぐる不確実性、英国のEU(欧州連合)離脱の影響、中国の構造調整と軟着陸の行方だ。4月理事会では、特に米国経済の実態と期待の乖離について議論されたようだ。米国をめぐる不確実性は4月会合時点よりも、明らかに高まっている。英国の離脱の影響も、6月に離脱協議が始まれば、本格化してくるだろう。中国の構造調整と軟着陸の成否も政策の舵取りに負う部分が大きい。仮に、今回、リスクバランスの判断を「中立」に修正するとしても、グローバルなリスクを強調して、過度の楽観を牽制しそうだ。

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