ライトハイザー氏はニューヨーク・マンハッタンの中央、つまりミッドタウンに本拠をおく巨大法律事務所の弁護士だが、もう1人、ウォール街に本拠をおく弁護士が、トランプ政権の重要ポストに就いた。5月2日、米上院によって証券取引委員会(SEC)委員長に承認された、ジェイ・クレイトン氏がその人だ。
クレイトン氏はウォール街でも著名な辣腕弁護士であり、さらに、比較的最近は、中国のネット通販最大手のアリババグループの米市場への上場案件を担当するなど、米金融業界でその名を知らぬ者はいなかった存在だ。
この超一流弁護士の“双璧”をトランプ氏が同時に指名したのは、1月4日、就任式の2週間以上前だ。1人は対中強硬派弁護士、もう1人はアリババグループと直接かかわった弁護士。その狙いは明らかだ。トランプ政権の対中国貿易不均衡の是正をも含む法務体制の完備である。
日本は決して安心してはいられない
くしくも、昨年12月、中国のネットサービスについて、USTRが偽造品市場の“ブラックリスト”に指定した。その直後に対中強硬派のライトハイザー氏がUSTR代表に指名され、同時にアリババグループにかかわったクレイトン氏がSEC委員長に指名された。
アリババグループの創業者であり、習近平国家主席とも親しい、会長の馬雲(ジャック・マー)氏が、このタイミングを逃すはずはない。ここぞとばかり“トランプ詣で”に打って出た。馬氏がトランプ氏に会ったのは1月9日のことだ。トランプ・馬会談は、ニューヨークのトランプタワーで約40分間行われた。馬氏はトランプ氏に「100万人の雇用創出」を約束した。トランプ氏は馬氏を「偉大な企業家」とたたえた。
しかし、その評価は、ソフトバンクの孫正義氏を「MASA!」と米メディアの前で2度も呼んでたたえたような“トランプ節”はそこにはなかった。馬氏の表情も硬かった。
そんな孫氏や、日米首脳会談での安倍晋三首相に対する、トランプ大統領の極めて友好的な対応ぶりに象徴されるように、トランプ政権の対日・対中戦略に違いがあることは確かだ。だからといって、日本は決して安心してはいられない。
5月5日、米国際貿易委員会(ITC)は、日本を含む8カ国・地域で生産される鉄鋼製品について、不当廉売(ダンピング)の認定を下した。これによって3月に商務省が決定した反ダンピング関税が確定することになった。日本製品に対する制裁関税が正式決定したのは、トランプ政権発足後、これが初めてだ。
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