「米中急接近」で米国の対日戦略はどうなるか 手ごわいUSTR代表の登場にも要注意

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中国は、自ら参加している東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を主導しようとしている。RCEPより包括的なTPPについては、米国離脱のあと、日本が主導することになる。その第一歩が7月に日本で開催が予定されているTPP首席交渉官会合だ。

そんな日本主導のTPPの先行きに不透明感が漂うようだと、たとえばマレーシアなどは、TPPよりRCEPを優先する可能性も高まろう。

手ごわい通商交渉第一人者の登場

TPP閣僚会議と同時にAPEC貿易相会合が開かれ、そこには、米国を代表して米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表が登場した。同代表はTPP復帰を明確に否定したうえで、今後の通商政策は「多国間の貿易協定よりも2国間のほうがいい」とするトランプ政権の方針を改めて強調した。

このライトハイザー氏のUSTR代表就任を米上院が承認したのは、5月11日のことだ。同氏は1980年代の共和党大統領として、トランプ氏が長年尊敬するロナルド・レーガン政権時に、USTR次席代表を務めたことがある通商政策専門の米国弁護士であり、その第一人者である。

日本にとっては、まったく手ごわい交渉相手の登場だ。なにしろ、次席代表時代には対日鉄鋼協議で日本に輸出自主規制をのませた実績があり、「日米貿易摩擦」の“生き字引”と言ってもいい存在だ。対中強硬派としても知られ、中国の不当廉売(ダンピング)を厳しく追及したことで有名だ。

筆者がいずれの資格も持つニューヨーク州およびワシントンD.C.の米国弁護士仲間では、通称、ボブと呼ばれている。国際貿易問題を専門にしたアメリカ人弁護士で、ボブの右に出る者はまずいない。こと通商政策に関するかぎり、弁護士出身者が多い議員が束になってかかっても、ボブのパワーには及ばないと言われるほどだ。

トランプ政権は、貿易不均衡の是正に執念を燃やしており、ライトハイザー氏は商務長官のウィルバー・ロス氏とともに、その実行部隊を率いることになる。

米国の対日貿易赤字は対中国に次いで大きい。ロス商務長官は「米国は対日貿易赤字にもはや耐えられない」と表明し、日本に対して100%厳しいと解釈される姿勢を示している。ライトハイザーUSTR代表と一緒になって、対日圧力を強める可能性は十分ある。

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