MBA留学、応援したのが縁の尽き?
そもそも若くてきれいで頭のよい嫁さんが、結婚間もないあなたの元を1年なり2年なり離れて世界中から集まる猛者たちに囲まれ、無事でいると信じるほうが酔狂とでもいうべきか。
大学2年生のときにテニス部で偶然知り合ったあなた(その後、ずるずる過ごして昨年結婚)と歩調を合わせてゆっくり成長してきた彼女も、ある日「私もget out of the comfort zone!!」などと言い出して、留学準備に入る。
見栄っ張りのあなたは、「貴美子の将来だ、僕も応援するよ」と言ってみたのはいいものの、いざ本当に受かってしまうと、あなたの夫としての地位は、世界中の外敵に囲まれて大いに揺らいでいくことになる。
あなたが相対的に退屈な人に
まず一流MBAの留学先には、パキスタンの大統領の甥とか、ヨーロッパ最高のボーディングスクールの御曹司とか、韓国財閥グループの息子とか、中国共産党の上級幹部の子弟とか、イタリアの有力プライベートエクイティファンド創業者の長男とか、ハプスブルグ家の子孫とか、ナイジェリアの有力議員の息子でベインの上級コンサルタントとか、GMAT800で世界物理オリンピック金メダリストたちが、東大法学部から三菱商事入った国内エリートの旦那の威光を翳ませる。
しかも賢い人は本当に賢く、授業中の発言を聞いていても10分前に教授が解説した高度に抽象的なコンセプトを応用してすぐさま知的な議論を組み立てていく。スポンジが水を吸収するような、とはよくいったもので、グローバルな生まれ育ちのよさに加えて、頭も超一流ときている。
もちろん中には大したことない人もいるのだが、トップ校にいくと、その中のトップ10%は私も舌を巻くくらい頭がよく、話していて刺激が多い。そんなアンソニーやらアレックスやらルーカスやらなんやらに囲まれている中では、半年前にハワイの教会で親族の前で交わした永遠の愛の誓いとやらは、いとも簡単に忘れ去られていくのだ。
最初はクラスメートとの親交を温めるための付き合いのクラブパーティに好奇心で参加しただけだったはずだ。日本人のスタンダードからすれば過度に思えるス キンシップも“文化学習の一環”とか自分を信じ込ませる。
ほっぺにされるキスは“こんにちは”と同義だと思い込み、やがて訪れる“より踏み込んだ行為”(グローバルエリートは保守的な家に育ったので、ほかの下品な金融コラムニストのように安易に下ネタに走れない)をひとたび犯せば、「1回したら何回しても一 緒か!減るもんでもないし!!」と、その後、あなたの嫁のテストステロンにストッパーは存在しない。
地下のダンジェンに飲みに誘われたかと思いきや、その後、世界中を駆け巡る(世界中からクラスメートが来てるので)うわさ話の怖さにも気づかず、ロングアイランドアイスティーのアルコールのせいにして、薬指に光るブルガリの指輪をそっと外すのである。
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