「企業年金未払い」その真相を追う
転職した会社員の企業年金を預かる「企業年金連合会」で、60歳以上の受給資格者の3割が年金を受け取っていない。前代未聞の事態はなぜ起きたのか。実効性ある対策とは。(『週刊東洋経済』9月22日号より)
企業年金(厚生年金基金、以下「基金」)のある会社を短期間(通常10年未満)で辞めた人や、解散した基金に加入していた人の年金資産を預かっている企業年金連合会(以下「連合会」)で、受給資格がある60歳以上の人に対して支給されていない企業年金が総額1544億円、年金を受け取っていない人(年金の請求をしていない人)が124万人に上ることが明らかになった(33ページ図参照)。
連合会によれば、2006年度の年金支払額は約3900億円。これに対し、年間の未支給額はその1割を上回る約480億円に達している。124万人という数字は60歳以上の受給資格者の3割に相当する。こうした事実を踏まえ、連合会では専用ダイヤルの開設や新聞広告掲載などに15億円の経費を投入。未受給問題の抜本的解決に向けて取り組む方針を明らかにした。
連合会では「(未受給の人の存在は)定性的にはわかっていた。厚生労働省に対しても社会保険庁が管理している住所情報を提供してほしいと要望してきた」(熊沢昭佳理事)と説明する。だが、連合会自体が実態をつかんでこなかったうえに、国会議員から指摘を受けて初めて調査を開始するなど、後手の対応が目立つ。また、周知のための施策の効果も未知数だ。厚労省は今回の報告を踏まえて社保庁保有の住所情報の提供を行う方針を明らかにしたが、未請求者の解消は茨の道だ。