各種報道にもあるように、「健康増進法」改正に向け、2020年の東京五輪はもとより、その前年に開かれるラグビーワールドカップ(W杯)に間に合わせるためには、今国会中の法案提出が不可欠だとされる。
夏季五輪が開催された会場での試みを改めて調べてみた。
2012年のロンドン大会では、競技施設の内部はもちろん、メイン会場となった競技施設が点在するオリンピックパークの敷地全体を含め、すべて禁煙と定められた(ただし、屋外にごく少数の喫煙所が設けられた)。ロンドンを含むイングランドでは2007年に施行された禁煙法を受け、「飲食店を含む、屋内の公共スペースでの全面禁煙」が法制化されているが、五輪開催の際には「屋外であっても、五輪観戦客が歩く敷地全体を禁煙」という厳しい措置を取ったことになる。
WHOは「分煙は認めない」と提唱
2016年のリオデジャネイロ大会でもロンドンと同じく、競技施設の内外を問わず、会場の敷地全体が禁煙とされた。ちなみにリオデジャネイロ州は五輪開催を勝ち取る直前の2009年8月、「レストラン、カフェの全面禁煙」を法律で定めている。
厚労省は、過去の夏季五輪開催国による対策なども参考にしながら、日本での対応の検討を進めてきた。同省が掲げる「受動喫煙防止対策の強化について」という書面を読むと、飲食店および宿泊施設の共用部分では「原則建物内禁煙」とうたっており、IOCと世界保健機関(WHO)が目指す「たばこのない五輪」の方向性により近づけようとしているが、ただし書きとして「喫煙室設置可」と明記してある。
つまり、WHOが提唱する「たばこ規制枠組条約」にある「たばこの副流煙のばく露から身を守ることができる手段は、全面禁煙だけであること(換気や喫煙場所の指定といった手段は認められない)」とする主旨から反する内容となっている。
一方、欧州の主要国ではWHOの意向に沿った形で、たばこに対する規定が強化されており、「飲食店など室内での全面禁煙」の達成も実施できている。なお、例外的にホテルでは一部の客室で喫煙ルームの設置も認められてはいるものの、「共用部分・客室問わず100%の禁煙」を掲げる宿泊施設が非常に増えている。
欧州では、たばこ税の値上げや、各国保健当局による努力の結果、喫煙者が確実に減少している。たとえば英国では、1990年代初めの喫煙者の割合は人口比30%だったが、直近統計(イングランドのみ)の2015年には16.9%まで減少と目覚ましい結果が出ている。
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