アマゾンに値上げ迫るヤマトが抱く「不安」 大口客失えば痛手、強気の姿勢を貫けるのか

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大口顧客との交渉では、受け入れる荷物量の削減も交渉の武器にする。2017年度の取扱個数は17.85億個と、前期比8000万個の減少を見込む。値上げに応じなければ契約を打ち切る可能性をにおわせる。

ただ、強気の姿勢を貫けるかは不透明だ。中でもアマゾンは特別な存在。あるヤマト幹部は売上高に占めるアマゾンの割合は「1割を超える」と明かす。アマゾンを失えば現状の宅配網を維持するのは難しい。

佐川の再参入、日本郵便の攻勢も?

ライバルの動向も気に掛かる。宅配便シェアが13%強の日本郵便は全国に3000を超える集配拠点を持っており、余力はありそうだ。また「ヤマトがそこまで単価を上げるならと、佐川が再び宅配強化に動くと脅威になる」と、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の安藤誠悟シニアアナリストは指摘する。

ファイズやSBS即配サポートなど新興勢力も無視できない。荷物量が多く配送効率のよい都市部に特化し、アマゾンとの取引をじわじわと拡大している。

ヤマトは9月までに値上げ交渉にメドをつけ、来年度からの業績改善を描く。だが回復を急ぎすぎると、大きな代償を支払うことになりかねない。

鈴木 良英 東洋経済 記者

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すずき よしひで / Yoshihide Suzuki

『週刊東洋経済』編集部記者

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