アマゾンに値上げ迫るヤマトが抱く「不安」 大口客失えば痛手、強気の姿勢を貫けるのか

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佐川の単価は2007年度から急降下、2012年度までの6年間で13%下落した。その結果、2013年にアマゾンの宅配からの撤退を決断。もともと強みとしてきた企業間物流へ軸足を移した。宅配は量を追わず値上げする方針に転換し利益は上向いた。

撤退した佐川の受け皿となったのがヤマトだった。「アマゾンの荷物を引き受ければ中長期で数量拡大が見込めると、当時の株式市場はポジティブにとらえていた」と、ある外資系アナリストは振り返る。

ヤマトは佐川の10倍となる4000カ所の拠点を持つ。引き受けられる荷物量は格段に多い。また佐川が配達を外部委託することが多いのに対し、ヤマトは大半を自社のドライバーが運ぶ。コストが大きくぶれず、採算性は低下しにくい。

だが「想像を超えるEC拡大に、(ドライバー確保など)体制整備が追いつかなかった」(ヤマトホールディングス〈HD〉の芝﨑健一専務)。自社のドライバーでは荷物をさばききれず、外部業者への依存が高まった。ヤマトも佐川と同じ轍を踏んだのである。

宅配ロッカーを1年で3000カ所設置へ

巨大な宅配網を抱えるヤマトは、佐川のようにたやすく宅配に見切りをつけることはできない。今年度は大改革を断行し、「時代に合わせて(体制を)設計し直す」(ヤマトHDの山内雅喜社長)。パートを含めた人員を9000人超増やす(2016年度は5202人増)ほか、宅配ロッカーを2018年3月までに3000カ所設置するなど受け取り方法を増やし、ドライバーの負担を減らす。

労働環境改善や採用拡大の原資を確保するため、27年ぶりとなる基本運賃の値上げを9月にも実施(平均15%)。懸案のアマゾンなど採算の悪い取引先1000社に対しても抜本的な値上げに着手する。

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