僕たちが「丸目の古いクルマ」に惹かれる理由

実は盲目になっていたかもしれない

ところが、そんなぼくの意見も若者には通用しない(!)。 若者は「そんなことより、いまのゴルフとまったく違うクルマとして、初代や2代目をとりあげるべきなのです」と言う。

それで、ぼくにも分かってきたことがある。

このクルマのかたち、本当に好きになれるか

古いクルマといまのクルマ。若いひとは、はっきり線引きする傾向にある。理由は簡単。自動車の継続的進化に興味がないからだ。

かつてぼくは自動車デザイナーに「1960年代にほぼ完成の域に達したクルマがあるのに、なぜ新車をデザインするのか?」と尋ねたことがある。たとえばオリジナル・ミニ(マニュアルは5段欲しいが)や、シトロエンDS(ウィンドウまわりに改善の余地はあるが)や、アルファロメオのスパイダー(トバすにはステアリングがやや不確かだが)が、その代表例だ。

答えは「これで終わり、って決めたらぼくたちの仕事がなくなってしまう」というものだった。もちろん衝突安全基準を満たすための車体大型化なども要件だ。ぼくたちはそれを聞くと納得する。ゴルフならゴルフなりに変化する理由があるのだ、と。でも若いひとと話しをしていて気づいたことがある。

実はぼくたちは、クルマの美に盲目になっていたかもしれない。だって、たしかに初代ゴルフといまのゴルフ、審美的にどちらがすぐれているか純粋に較べたらどうだろう? あきらかに勝負は初代ゴルフだろう。ゴルフに限らず、ほとんどの新型車で話は同じはずだ。LEDヘッドランプに普遍的な美なんてあるだろうか。

「このクルマのかたち、本当に好きになれるか」そうやって自問するとおもしろい。ぼくが認めていいと思ったモデルはそう多くない。MINIとアウディとマセラティとランボルギーニ、そのほかに数モデルは新車でも魅力的なカタチをしている。

音楽でもメロディ有限論というのがある。耳に心地よいメロディは80年代で使い尽くしたというものだ。それで音楽は終わりかというと、そうではない。ビートなど、時代感覚に即した表現があると業界のひとは反論する。

クルマにも同じような意見があるわけだ。でもやっぱりクラシックやジャズを含めて80年代までの音楽は耳に心地よい。そんな目で改めてクルマを見てみると、魅力の要件のひとつは丸目、つまり丸型ヘッドランプにあるように思えてくる。もっともLED、そしてレーザーへと向かう傾向のある最近のヘッドランプは、省エネなどを考えると避けられない傾向かもしれないが……。

環境にいいことこそ“善”。そう考えるのがクルマ業界のマジメなところである。でも生活を楽しくしてくれないと、はじまらない。若いひとに限らず、みんなが好きになれるカタチのクルマ。その再来を待ちつつ、今回はかつての魅力的な丸目たちにGOを。

(文:小川フミオ)

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