すると数秒後に、かわいらしいエビのアニメーションが現れ、尻尾を左右に振りながら画面上にしばらくとどまった。エビはプレゼントの1つで、日本円で約1600円。すると画面の向こうの桜子は、「煮卵さん、エビありがとう!」とお礼を言ってきた。これを聞いて鄔智駿、大喜びした。
「彼女は、私のことを煮卵と呼ぶのです。私(頭が)丸いから、きゃはは!」
丸顔で髪を短くそろえ、銀縁の眼鏡以外は凹凸の少ないツルッとした印象の鄔は、中華メニューの1つ、しょうゆで煮込んだ卵に確かに見えなくもない。それにしても、自分で頭をツルッとなでて、はしゃぐ煮卵さん、とにかく明るい。
ネット生中継に出ている「桜子」にこの瞬間の彼の姿が見えているわけではない。「桜子」には、贈り物と同時に表示される彼のアカウント名が見えるだけだ。ただ長い間ファンをやっていれば、見た目の説明やSNSを使った写真のやり取りなどもされるのであろう。
2時間でプレゼント2万円以上
彼は話しぶりから25万円程度の月収を得ていると思われたが、その日、私が一緒にいた2時間余りで合わせて2万円以上のプレゼントを「桜子」に贈った。私の目の前なので見栄も作用したと思うが、それにしても結構な額である。これまで最高額では1日で12万円以上使った経験もあるそうだ。プレゼントを贈る理由についてこう話す。
「メンツの問題ですかね。見て、見て! ここに私の名前が出るでしょう……これは本当にうれしいです」
その指先を追うと、プレゼントを多く贈ったファンとして確かに鄔のアイコンがランキングされていた。しかし、カネを使ってプレゼントを贈ったとしても、何か特別な対価を得られる感じにも思えない。それでもプレゼントを贈りたくなるのは、どういうときなのか尋ねると、その心理をこう明かしてくれた。
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